《ソフトバンク躍進》IT巨艦ファンドは有望 孫氏は生涯現役?

ニュース解説
SMBC日興証券の菊池悟シニアアナリスト

 ソフトバンクグループが躍進している。2017年3月期決算で最終利益1兆円超えを達成。積極的なM&A(企業の合併・買収)戦略で事業を拡大する一方、世界最大規模のITファンド創設で注目を集める。グループを率いる孫正義社長の狙いは何か。同社や通信業界に詳しいSMBC日興証券の菊池悟シニアアナリストに聞いた。

 --利益1兆円突破は国内の事業会社ではトヨタ自動車に続く快挙だ

 「ソフトバンクはあまり期間の利益というのは重視されていないと思う。ビジネスモデルがいろいろ入っており、(傘下の)会社の評価が上下するので、それぞれ見ないといけない。一番キャッシュを生み出す力のある国内の通信事業は安定している。Yモバイルなど第2ブランドが増えていて少し業績の負担になると思うが、なんとか乗り切っていけるだろう」

 --傘下の米携帯電話大手スプリントはどうか

 「利益はコスト削減で改善している。ただ価格競争が激しく、業界4位なので、ずっとゲリラ戦みたいなものを仕掛けないといけない。通信は規模の経済が一番生きる業種だ。したがって3位のTモバイルUSとの統合話が出ている。実現すれば米国事業は改善すると思う」

 「ただ、米国事業は重要かもしれないが、成長事業ではないと思う。もっと経営資源を財務や別の分野、テクノロジーに振り向けるべき。私は孫さんはいずれスプリントを売却するとみている。ソフトバンクがこれまでいろんな試練を乗り越えてきたのは、孫さんが行くべきところと引くべきところを分かっているからだ」

 --英半導体開発大手のアーム(ARM)・ホールディングスも買収した

 「ソフトバンクはARMを買って以降、世界が広がっている。インターネットというビジネスはこれからも大きいけれど、今はグーグルもテクノロジーの世界に移っていっている。孫さんはグローバルのテクノロジー、ICT分野、ネットを含めてリーダーになる存在なのかなと思う」

 --10兆円超を投資するITファンドを創設した

 「ソフトバンクはいろんな投資機会がある中で財務資源が非常に限られてきている。お金が足りない。とはいえ、これ以上借金を増やせば、レバレッジがききすぎてリスクは高まる。ファンドというのは非常にいいスキームだ」

 「みんな集まって投資する共同作業なので、いろんな波及効果があると思う。米アップルや米半導体大手クアルコム、台湾受託製造サービス大手の鴻海(ホンハイ)精密工業、シャープも入っているけど、他にもグローバルのIT大手が入ってくると思う。サウジアラビアとか政府のお金も入ってくるので協力態勢ができる。ファンドに投資してもらった会社は、たぶんアップルとかホンハイの支援を受けることができると思う。アドバイスだったりビジネスの紹介だったり。そういういろんな可能性を秘めているファンドは、非常に有望と思う」

 --あえて課題をあげるとすれば

 「まずファンドはちゃんと成果を出していく必要がある。毎年利益を出していくのは大変で、ちゃんと協力態勢をつくって支援していく必要がある。米国の通信事業もきちんと再編だったりリスクを低下させるようにポジションを調整したりしないといけない。それから、すべての源にある国内通信の潤沢なキャッシュフローを維持しないといけない」

 --米国投資など最近はホンハイとの関係で注目を集めることが多い

 「まだよく分からないが、たぶんホンハイもビジネスを少し変えようとしているので、ソフトバンクのスキームを使いながら自分のビジネスを広げようとするのではないか。ソフトバンクもそうだ。おそらく既存ではなく新しい分野で協力していくのでは」

 --孫社長の後継者問題はリスクにならないか

 「(孫氏は)今はそういうことをまったく考えていないのではないか。自分が考えているようなビジネスを後継者が本当にしてくれるかは分からないし、そこは難しい面があるのでは。たぶん人生が終わるまで現役で、最後まで自分が第一線でグローバルに引っ張っていくのだと思う。ただソフトバンクも、孫さんという個人ではなく、もっと組織的なものに仕上がって、今どんどん変わっていっている。ファンドだってチームでやる。機関化していくなかで、自然と後継者も育っていくと思う」

 《取材後記》業容を広げ世間の耳目を集めるソフトバンクと孫社長。今一番「旬」の企業で、日産自動車のゴーン氏と並ぶ最もカリスマ性のある経営者かもしれない。ソフトバンクウォッチャーとして定評のある菊池さんは、精力的な孫氏は生涯世界を引っ張ると予測した。かくいう私も孫さんの八面六臂の活躍をいつまでも見続けていたい一人かもしれない。(SankeiBiz 柿内公輔)

 

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