《外貨の活用》(6)〈お金に働いてもらおう〉外貨を人生の味方に

マネー講座

 この連載では、SMBC信託銀行のアナリストや商品開発担当者たちが、なぜ日本で暮らす私たちに外貨が必要なのか、外貨にはどんな商品があるのか、日本円にくらべた外貨投資のメリットやリスク、そして上手に選択しながら外貨投資を進めるポイントなど、外貨を扱うプロフェッショナルの視点をご紹介してまいりました。連載最終回では、あなたの代わりにお金に働いてもらうことを考えながら、みなさんの資産形成のために外貨で投資する意義を一緒に考えていきたいと思います(SMBC信託銀行 阿部豊憲)

投資=あなたの代わり

 日々の生活や将来の備えにはたくさんのお金が必要です。多くの読者の皆様にとっては、そういったお金はご自身やご家族などが一生懸命働いた収入でまかなっていると思います。もっと収入を増やしたいと思っても働く時間は限られていますし、給料が大きくアップする仕事を探すのも簡単ではありません。そこで、もしだれかがあなたのために働いてくれるとしたらどうでしょうか。「お金にも働いてもらおう」。これが今回のテーマです。

 では、どのようにお金に働いてもらうか。それが「投資」です。投資とは、あなたのお金を必要としている人に届け、あなたに代わって働いてもらうということ。株式や債券の投資などでは、株主もしくは債権者であるあなたのために、その道に長けた経営者や従業員たちが知恵をしぼり汗を流してくれる、ということです。

 一方、お財布やタンスのお金は働いてはいません。あなたが使うのを待っているお金です。円預金はちょっと微妙です。銀行はあなたの預金を会社や個人に融資したり、運用したりしています。しかし、円預金の金利はほぼゼロ%です。

せっかくならグローバルに考えよう

 私は、グローバルに展開する外資系金融機関で投資商品の開発を担当してきました。長年、さまざまな通貨や国・地域の運用環境を見てきた経験からも、大事なお金に働いてもらうなら、一部でも必ず外貨を選ぶことがよいのではないかと考えます。

 通貨の価値は経済状況や成長力、財政状況や政治体制などその国の実力をあらわすものだと思います。外貨となったあなたのお金は、成長著しい新興国では道路や港といったインフラとなり経済成長をもたらし、アメリカでは世界を驚かすテクノロジーとなり、また世界を変える若き起業家となってあなたのために働いてくれるのです。そして、その成果は通貨価値としてあなたの資産の一部となるのです。

日本にいてなぜ外貨?

 日本で暮らすには何をするにも日本円が必要です。生活のためのお金は日本円で考え、大きく損をしないことを第一に考えるべきでしょう。

 一方、投資という観点では外貨に目を向けるメリットが大きいのです。連載2回目の記事でも触れていますが、日本では膨大な政府債務、少子高齢化と人口減少、個人消費の低迷と企業収益力の低下、そして税収の低迷という負のサイクルが20年間続いています。みなが大丈夫と思っているからこそ円は価値を保っていますが、将来を考えると日本円はいつまでも安心・安全な通貨だとは言いきれません。

 また、日本での投資は、現状ではなかなか報われないことも知っておきましょう。マイナス金利という環境下、円預金は当分ゼロ%が続くでしょう。長いデフレで消費者はモノを安く買い、企業は売上を伸ばせず、給料が増えない会社員は高い買い物が出来ません。

 IMFによると低成長サイクルから抜け出せていない日本の2016年のGDP成長率は1.0%と主要各国・地域の成長率にくらべても低い水準となっています。また、16年10~12月期の日本企業の営業利益率は7%台と、米国企業の12%台に比べて低く、投資効率の指標でもあるROEも約7%で米国企業の約13%に差がついたままで(16年12月末時点。TOPIXおよびS&P500についてブルームバーグのデータをもとにSMBC信託銀行が算出)、日本企業への投資効率はアメリカなど外国企業に比べて報われにくいのです。

 アメリカでは次々とイノベーションが起こり、若き起業家たちが世の中の仕組を変える商品やサービスを生み出しながら高収益をあげています。高い給料と働き甲斐のある環境は、世界中から優秀な人材を吸い寄せ、次のイノベーションを生む土壌となっていきます。新興国では豊富な資源や労働人口を背景に、高い成長率を維持しながら全体として先進国に迫る経済規模となっています。

 お金は私たち人間と違って、ボーダーレスにどこにでも行くことができ、グローバルで働く柔軟性が高いのです。それなら、イノベーティブで優秀な人材が集まる国、活気があふれ成長を続ける国など、グローバルな視野で国や地域を選択するほうがお金が活躍するチャンスが広がるというものです。

メリットやリスクは迷わず相談しよう

 外貨は為替変動リスクが心配という方もいるでしょう。すべて円に戻すことにこだわると、為替変動はリスクになります。ですが、外貨として働くお金はずっと外貨のままでよいと思います。連載の第3回では、外貨のメリットとリスクについて解説していますが、その中でリスク抑制のためにも米ドルを中心とした「外貨の分散」をお勧めしています。

 基軸通貨である米ドル建ての資産は、日本円の資産に比べて値動きが安定する傾向があります。また、主要産業や地理も異なる複数の国の通貨を保有することで、通貨価値の変動を打ち消しあう効果も期待できます。

 外貨はそのまま外貨預金として持ってもいいですし、外貨建て投資商品を購入したり、外貨建て保険を買ったり、子や孫の世代に相続させることもできます。もちろん海外旅行で使うことも、今ではインタ-ネットショップで外貨決済をすることも可能です。使うことまで考えると、外貨のまま保有するメリットがひろがります。

 第4回の記事では「外貨の分散」について、いろいろと具体的な方法をご紹介しました。基本となる外貨預金から、時間分散に有効な外貨積立、あらかじめ指定した為替レートで交換される指値取引や仕組預金などについて説明いたしました。どの方法もニーズがあって開発され、今も多くの方に活用されている有用な方法です。

 でも初めてだと、やっぱり踏み出しづらいですよね。そのような場合は、プロの知識を使うのがよいでしょう。外貨については外貨に強い金融機関に相談することをお勧めします。

 生活を支えるためのお財布の円は大事。そのうえで、あなたの大切なお金には、働きがいのある環境、とくに外貨となって成長を実感できるグローバルな環境で働いてもらうことが、あなたの人生の強い味方になってくれるのです。

(※マネー講座は随時更新。次回から新しいテーマで掲載します)

【プロフィル】阿部 豊憲(あべ・とよのり)

SMBC信託銀行 商品企画部
商品企画部長
シティバンク入行後、金融商品仲介業務や投資信託の企画・開発業務に従事。その後、銀行全般の事務マニュアル作成・管理業務を経て、現在はSMBC信託銀行の個人金融部門で総合的な商品企画・開発業務を担当。経営学修士、日本証券アナリスト協会検定会員。