《株式の魅力》(1)<投資のイメージと実際>長期的視点で企業に寄り添う

投資講座

 6月初めに日経平均株価が1年半ぶりに2万円の大台を回復しました。このニュースをお聞きになって、何となく気分が良くなる方もいらっしゃるでしょうが、どうせ自分には関係ない、と気に留めない方も多いのではないでしょうか。同じように株式投資も自分には関係ない、あるいは知識や時間がないので投資しても損するだけじゃないか、と距離を置いてしまう方もまだ多いのが実態です。

 しかし、株価の動きは経済動向や企業の業績と密接に関連していますし、上場企業が株主の利益を意識した経営を行う方向性が強まっていることから配当が増加しやすい傾向になっています。その結果、株式投資は特に長期的な観点から、個人の資産形成にとって一段と重要なものとなっています。今回の投資講座では日本株を中心にご説明しますが、皆様が資産形成をお考えいただく際の参考になれば幸いです。(野村証券 若生寿一)

株式投資のメリット

 一般に株価と言うときには、個々の会社(個別銘柄)の株価を指す場合と、ある条件で集計された日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの株価指数の場合があります。いずれも、インターネットのポータルサイトなどで簡単に価格や動きを確認することができます。

 個別企業の株式を買うことで会社の株主になることができます。株主になると、買った時よりも株価が値上がりした場合に売却すれば利益が得られることに加え、会社の利益の一部である配当金や、株主へのお礼のような意味合いで自社の商品やサービスなどの株主優待を受け取ることができます。こうした配当や優待は、その合計金額を利回りに換算するとかなりのお得感があるものもあります。

 日本銀行のマイナス金利政策の下、東証一部全体の予想配当利回りと10年国債の流通利回りを比べると、株式の配当利回りの方が高いことが確認できます。さらに、会社の所有者として株主総会で議案に対する議決権を行使して経営方針に意見表明することもできます。

 個別企業の株価は様々な理由、たとえば新商品がブームになったとか景気見通しが変化するといったことで変動します。それは株主になっている会社の株価(価値)と社会現象や景気が連動することを意味します。そうした場合に、なぜ保有する資産の価値が変動するのかを考えていただくことで、単に報道に接するよりも、景気や社会との関わりを実感していただけるでしょう。これも株式投資によるメリットです。特に株価は企業業績や景気が変化するわずかなサインを反映して動きますので、結果的に実際の経済活動よりも先行して動くため、ご自分のお仕事の環境が変わるかもしれないという兆しを感じていただくこともできるでしょう。

株式投資への後ろ向きなイメージ

 もちろん株価が下落した場合には損失が発生しますので、これは株式投資のデメリットと言えます。実際に株価がどのように決まり、動くのかについては、次回以降ご説明します。

 また、その損失に関連して株式投資への後ろ向きのイメージが抱かれやすいかもしれません。例えば、日経平均株価は1989年末に38915円の最高値をつけた後、資産バブル崩壊を経て2009年に7054円の安値を記録しましたが、この20年間の株価下落で「株式投資は損をするもの」というイメージが強まった面もあるでしょう。いくら配当利回りが高くても、株価自体が大きく下がると結局投資をしてもお金の無駄ということになります。

 長期的に株価が下落する間に日本の株式市場で海外投資家の影響力が強くなったため、日本人は株式投資で利益を上げられないという見方や、あるいは最近では日本銀行が株価指数に連動するETF(上場投資信託)を購入したりして人為的に株価が押し上げられている、という見方もあります。そして、デイトレーダーと呼ばれるような個人投資家の一部が頻繁な売買を繰り返して利益を上げているといった話が伝わると、情報も時間も株式取引のための情報端末等の専用機材もないほとんどの個人は、株式投資で利益を上げられないという思い込みが強くなっているかもしれません。

「時間」を味方につければ資産形成に役立つ

 しかし、個人が資産形成するにあたって、「時間」は大きな武器になります。例えば、「日経平均株価」という株があって、それを毎月、月末の価格で1株ずつ購入したとします。それを10年間続けたとき、買った値段の平均が10年移動平均ということになりますが、これは6月時点で120株を1株当たり平均13350円程度で買ったということになります。

 つまり、株価の変動に関わりなく10年間長期積立投資を続けていれば、今の株価を2万円として、1株当たり6650円の利益が出ている(売買手数料などのコストは無視します)ということです。ちなみに日本の資産バブル崩壊時期を含む30年移動平均も16800円程度ですから、その間長期積立投資を続けていれば、報われている計算になります。

 景気や企業業績には山谷があり、時として想定を超える様々なショックも起こります。しかし、個々の企業が生き残るために長期的観点から利益を出す努力をしっかりと行い、それが全体としては実を結ぶと考えれば、株式投資によって長期的な企業利益の成長の果実を受け取ることができると考えられます。

(※投資講座は随時更新。次回も「株式の魅力」をテーマに掲載します)

【プロフィル】若生寿一(わこう・じゅいち)

野村証券 投資情報部
エクイティ・マーケット・ストラテジスト
野村総合研究所入社後、経済調査部、ロンドン現法勤務を経て、野村証券投資調査部にて日本株投資戦略の策定を行う。現在はマクロ経済分析に立脚した、日本株を中心とした資産選択などの投資戦略の策定を担当。テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」レギュラーコメンテーターなどメディアを通じた情報発信も行う。

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