《株式の魅力》(2)<企業の利益と株価の関係>方向と変化、そして「質」に注目

投資講座

 株式投資に対するイメージを調査したアンケートでは、ギャンブル、賭け事、といった印象を持つ人が少なくありませんでした。確かに、株価は日々変動しますし、投資額が保証されているものではないため、株式投資の経験がない方は身構えてしまうかもしれません。しかし、ギャンブルは「誰かの負け」が「誰かの勝ち」となるものです。それに対して、株式投資の対象は企業で、理屈の上では企業が事業活動を通じて生み出す利益を分配する仕組みなので、「誰かの負け」がなくても投資家にとっては収益を得るチャンスがあるのです。今回は企業の利益と株価の関係について考えてみたいと思います。(野村証券 澤田麻希)

株価は企業の利益と連動する

 まず、株価と企業の利益の関係を確認してみましょう。日経平均株価とEPS(1株当たり税引き後利益)を並べてその推移をみてみると、水準の違いはありますが、中長期的に同じ方向だということがわかります。両者の関係からは、企業の利益が回復方向にあるときに株式に投資することが望ましいと言えそうです。

 企業の「利益」というのは、「売上」から「費用」を差し引いたものです。利益を伸ばすためには、売上を増やすか、費用を減らすか、もしくはその両方を行うことが必要となります。まずは、企業の売上が伸びるような環境にあるかどうかを見極めることが必要です。

 そして稼いだ利益の一部が、普通は配当として株主に還元されます。理論的には、株式の価値(株価=EPS×株価収益率(PER))は企業がこれから支払い続ける配当の総額に等しい、ということになります。配当が増える、もしくは企業の利益成長率が今より高くなると企業の価値、つまり株価は上昇しやすくなります。

 一方で株価が変動するということは資産の価値が不安定になるためリスクが高いというようにとらえられることがあり、株式への投資にあたっては銀行預金や国債など安全資産の金利以上に高い収益が期待されます。この金利を上回る部分を「リスクプレミアム」と呼びます。将来の業績が不透明な場合やリーマンショック、東日本大震災のようなパニック的な状況に陥った際に株価は下落しやすくなりますが、こうした時にはリスクプレミアムが上昇していると説明されます。このような状況にならないかどうかにも目配りは必要です。

利益の変化をとらえる

 利益が増加する見通しとなれば、株式市場での評価が高まりやすくなります。加えて、それまでの見方が変化する場合には、市場での評価も修正されることになります。例えば減益見通しが増益見通しに転換した企業や、増益見通しが上方修正されてこれまで以上に増益率が高まると予想される場合にはさらなる株価上昇要因となります。逆に、業績見通しが急減した場合などは株価下落につながります。

 このような利益の変化をとらえる指標として「リビジョンインデックス(RI)」があります。RIは、予想が上方修正された銘柄の構成比と下方修正された銘柄の構成比の差を示しています。プラスであれば上方修正が多く、逆にマイナスであれば下方修正が多く、さらに数字が大きくなればそれだけ勢いが強いということになります。一般的にはRIの転換点が株価トレンドの転換点と重なりやすいと考えられます。2017年4-6月期の業績予想は一旦上方修正の勢いが弱まって、業績面から株価を後押しする動きが一服する形となりました。しかし、7-9月期に入ってからの暫定集計値では上方修正の勢いが再度強まってきています。その意味では、もう一段の株価底上げが期待できるとも言えそうです。

 利益予想が変化する際には、個別企業固有の要因もありますが、全般的には内外経済やそれを踏まえた政策動向が重要です。さらにそれらを反映する為替レートの動きも重要です。自動車関連や電気機器など外貨で収益を上げる輸出企業にとって、円安は円換算した利益が膨らむため業績改善度合いが大きくなる要因です。そうした場合、業績見通しの上方修正を期待した株価上昇の動きが見られます。

利益の「質」にも目配りを

 また、企業の収益性や成長性をはかる具体的な指標としてROE(自己資本利益率)があります。ROEは企業が株主の持ち分である自己資本に対しどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示します。言い換えれば、利益の「質」のような指標になります。ROEが上昇傾向にある企業は資本をうまく活用し、成長性が期待できる企業ということにもなります。長期的には「企業が自己資本を使って生み出す利益」と「投資家が得られる投資収益」は概ね一致すると考えられており、ROEが上昇している銘柄は長期的に株価が上昇しやすくなると考えられます。

 投資を始めるにあたって必要な企業情報の収集については、企業のホームページ上の「投資家向け資料」等で確認することが可能です。決算短信や中期経営計画において、現状のビジネス環境をはじめ企業が先行きに対してどのような考えを持ち、どんな戦略で利益を伸ばしていこうとしているのかを把握することができます。また、企業の概要や財務の主な数字をコンパクトにまとめた書籍を書店で入手できます。これまで述べてきた企業の利益の状況や利益の変化についてしっかりと銘柄研究をしていただき、皆様が長期的に寄り添える銘柄を見つけていただきたいと思います。

(※投資講座は随時更新。次回も「株式の魅力」をテーマに掲載します)

【プロフィル】澤田麻希(さわだ・まき)

野村証券 投資情報部
野村証券入社後、営業店を経て、投資情報部にて個人投資家向け株式資料等の作成を担当している。東京証券取引所記者クラブにて記者向け場況レクチャーや日経CNBC「今日の日本株(ラップトゥデイ)」に出演するなどメディアを通じた情報発信も行う。

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