《株式の魅力》(3)<景気循環やテーマと株価>市場全体と個別銘柄の動きの違い

投資講座

 株式投資を行う際、市場全体の動きに投資するのか、個別銘柄に投資するのか、は個々人の考え方もあり判断が難しいところです。いずれにせよ、長期的な視点を持つことが重要です。そして、1つの銘柄を持ち続ければよいという単純なものでもありません。過去、景気の状況や政策などによって、市場平均以上に上昇する銘柄もあれば、下落する銘柄もありました。今回は、こうした景気や政策の動向と株価の関係について整理したいと思います。(野村証券 大坂隼矢)

景気循環を知ることで株式相場とうまく付き合う

 「景気」という言葉はとても曖昧な概念であり、定義づけは簡単ではありませんが、日本銀行(日銀)によると、「実体経済の状況に加え、企業や家計の経済活動に対するマインドを表す言葉」とされています。実際に景気を判断するには、様々な経済統計を確認する必要があります。これを企業の動向などと合わせて分析することで、現在の景気の状況を知り、今後を予測することができます。

 景気の全体感を把握する指標としては、生産、雇用など様々な経済活動での重要かつ景気に敏感に反応する指標の動きを統合して内閣府が作成した景気動向指数が挙げられます。この景気動向指数のうち、景気とほぼ一致して動く指標(一致指数)と日経平均株価の動きを見ると、多くの局面で景気動向指数がピークを迎える時や底を打つ少し手前に株価のトレンドが転換していたことがわかります。つまり、株価は景気を先取りして動くことが多いと言えます。

 さらに細かく見ると、景気が上向く局面では消費や企業活動が活発化するため、素材を始めとする製造業などの「景気敏感株」が市場平均以上に上昇する傾向があります。一方、景気が下向く局面では、景気の状況に関わらず業績が安定している医薬品や家庭用品などの「安定株」が市場平均よりも下落しにくい傾向があります。例えば、風邪を引いた時の薬の量は、景気動向に左右されにくいため、医薬品企業の業績は安定していると考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

 このように、経済統計から景気の現状を知った上で株価を見ることが必要です。景気動向指数の他にも、総合的に一国の経済の動きを表すGDP(国内総生産)や鉱工業生産なども景気の判断には有効です。また、消費者や企業の心理状態を示す、様々な景況感の指数も押さえておきたい経済統計です。

 景気を考える上では、政策動向も重要です。金融政策では、日銀が2013年4月に導入した量的・質的金融緩和によって、日本の長期金利は低下し、為替市場では大きく円安が進行しました。金利低下は企業の設備投資を促し、円安は日本の輸出企業の価格競争力を強めることで景気を押し上げる効果が期待されます。ただし、金融緩和を強化しすぎると、過度なインフレの発生や、日銀の信用力低下にもつながる懸念があります。また政府はこれまで、景気の悪化に対して、財政政策を実施し、需要を刺激することで景気の持ち直しを図ってきました。次にどのような財政・金融政策が打たれるのかは押さえておかなければいけない重要なポイントです。

成長するテーマを見つけ収益構造が変わる企業を探す

 このように、景気循環と株価の関係は重要です。しかし、景気循環に関係なく、株価上昇が続く企業も中には存在します。このような企業は多くの場合、成長テーマやトレンドが関係しています。1990年代後半の日本の通信株などがその例として挙げられます。

 90年代後半には、日本の通信株が大きく上昇しました。この時期は、パソコン、インターネットが世界的に普及した時期です。これまで通話のみだった通信会社の収益源に、インターネットを活用した通信パケットなどの新たな収益源が加わるとの見方や、高度情報社会の構築に向けた規制緩和などが通信株上昇の要因となりました。

 成長テーマの探し方は数多くありますが、その一つが、政府が示す成長戦略を参考にすることです。成長戦略に組み込まれているということは、その産業の成長性が有望視されていることはもちろん、前述した通信株の例でもあったように、政府が規制緩和などを通じて、成長をバックアップしていくことも期待されます。現在政府は、一億総活躍社会の実現を目指し、「働き方改革」の議論を進め、長時間労働の是正などを盛り込んだ実行計画をまとめています。こうした改革や、人手不足という日本経済の構造的な課題を、人材派遣や職業紹介という形でビジネスチャンスとして活用している企業は成長性が高いと考えられます。

 実際に、2016年末を基準(100)として日経平均株価を指数化したものと、人材関連企業株価指数(人材派遣または就転職支援を含む人材紹介を主要業務とする上場銘柄のうち、時価総額上位10銘柄の修正株価を指数化し、単純平均したもの)を比較すると、人材関連企業株価指数が総じて堅調な動きとなっています。株式市場が成長テーマとして評価しているとも言えそうです。

 ただし、成長テーマへの投資にもリスクはあります。成長する分野の競争環境が激化することや、期待が過度に市場に織り込まれ、実力以上の株価評価になっていることがあるからです。関連企業の業績トレンドがそのテーマによって本当に変わるか、過去の似たケースと比較するなど、検証は必要です。

 17年6月9日に公表された政府の「未来成長戦略2017」では、人工知能やIoT(モノのインターネット)などを様々な産業や社会生活に取り入れ、人手不足や生産性の改善を促すとしています。IoTや人工知能などは、成長テーマとしてすでに市場から認識されていますが、今後も市場をけん引する大きなテーマであると言えます。このようなテーマにより、大きく変化する企業を探してみるのも、株式投資の醍醐味と言えるのではないでしょうか。

(※投資講座は随時更新。次回も「株式の魅力」をテーマに掲載します)

【プロフィル】大坂隼矢(おおさか・じゅんや)

野村証券 投資情報部
2010年に野村証券入社。3ヶ店の支店業務を経て、2015年3月より投資情報部。現在は個人投資家向けに投資情報の提供を行う。

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