《株式の魅力》(4)〈株価分析と投資スタイル〉水準の評価とトレンドの見極め

投資講座

 前回の記事では、景気循環や成長テーマの判断が投資にとって重要であることをご紹介しました。ただし、実際にそのテーマが広く知られた時、すでに株価が上昇してしまっていることが多くあります。そのため、株価が業績の動きと比較して現在どのように評価されているのか、また、株価そのものの動きはどうなっているのかを知ることも、景気動向を見ることと同様に重要です。今回は、そうした分析手法の一部をご紹介します。(野村証券 大坂隼矢)

企業の業績と株価のバランスに注目する「ファンダメンタルズ分析」

 ファンダメンタルズ分析とは、企業の業績や財務状況をもとに、現在の株価がどのような水準で評価されているかを分析する手法です。株価水準を評価する指標としては、利益と株価の関係性を表した株価収益率(PER)と、資産との関係性を表した株価純資産倍率(PBR)などが代表的です。PERは、株価を1株当たり税引き後利益(EPS)で割ったもので、株価が利益に対して何倍で評価されているかを示す指標、PBRは株価を1株当たり純資産(BPS)で割ったもので、現在の企業価値が手持ちの資産の何倍に評価されているかを示す指標です。一般的には、PERやPBRの高い銘柄は割高に見えますが、利益成長への期待の強さを反映していることもあり、別の角度からの分析も必要です。

 また、業種によってもPERやPBRの平均的な水準は異なります。業種別のPBRと直近予想ベースROE(自己資本利益率)の散布図が参考になります。ちなみに、PBRとROEを乗じたものがPERとなりますので、図表の右上に行くほど、PERが高いということになります。ソフトウェアなど、成長性が高いと評価されている業種や、景気に大きく左右されず安定して利益を生み出す業種である食品や家庭用品などのPBRは市場平均より高くなっています。

 一方、自動車や金融など、成熟産業と見られがちな業種や、商品市況次第で利益が変動すると考えられがちな商社のような業種のPBRは相対的に低くなる傾向があります。また、こうした市場平均との対比だけでなく、競合他社との比較や、過去の水準と比較して判断することも大切です。

代表的な投資スタイルである「グロース投資」と「バリュー投資」

 PERやPBRを理解した上での株式投資の代表的なスタイルとして、グロース投資とバリュー投資が挙げられます。グロース投資とは、将来の企業の成長性を重視し、業績の伸びが期待できる銘柄に投資するスタイルです。一方、バリュー投資は、過去の動きや市場平均から見て割安と判断される銘柄や、配当利回りの高さを重視して投資をするスタイルです。

 グロース投資では、成長性を重視して、足元の株価上昇を評価する場合が多いため、PERやPBRの高い銘柄を選定することが多くなります。グロース投資は、その株価上昇トレンドに乗ることができれば、比較的早期に投資による収益を得られやすいというメリットがあります。

 2007年に大きく上昇した「その他製品」指数(東証33業種)が、グロース投資の考え方が当てはまる例として挙げられます。この上昇の背景には、「その他製品」に属する時価総額最大のゲーム企業が06年末に発売したゲーム機の大ヒットなどがありました。結果、07年はTOPIXが12%(06年末比)下落したにもかかわらず、「その他製品」指数は40%近く上昇しました。ただし、このような銘柄は、市場からの期待値が高い銘柄が多いため、売り上げの伸びが鈍化したり、業績見通しの上方修正が止まったりした際には、株価が急落するようなリスクも考えておかなければなりません。

 対照的にバリュー投資は、PERやPBRが過去と比較して低いと考えられる銘柄を選定し、過去の平均的な評価水準へ戻ることを期待して投資する手法です。

 先ほどの散布図では、自動車のPBRが市場平均より低くなっています。しかし、ROEは市場平均を上回っており、利益を生み出す力が弱いわけではないため、将来的に再評価されることも期待できます。12年前半には、為替が80円/ドルと歴史的な円高水準にあり、自動車メーカーの業績不透明感が強く、自動車株の多くがPBR1倍程度でした。しかし、12年後半からは、アベノミクスへの期待から円高是正が進展し、自動車株の再評価が始まりました。12年9月末から13年末までの期間には、TOPIXも76%上昇しましたが、自動車に代表される「輸送用機器」指数(東証33業種)は104%上昇しました。

 ただし、市場平均や過去よりも指標の水準が低いということには理由があります。12年の自動車株では円高がその要因でした。その理由を明確にし、何が起きれば再評価されるのかをしっかりと認識して選定を行わなければいけません。為替以外にも、「不採算事業を売却し、資本の効率化を図っている」など、評価が変わる要因は数多くあると思いますが、ご自身でしっかりと想定しておくことが大切です。

 また、配当利回りを重視するのもバリュー投資の一種です。配当利回りとは、投資した金額に対して、1年間に受け取れる予想配当金の割合を示したものです。投資家にとっては、利益に裏付けられた配当収入の高さが株を保有する理由となるため、株価の下支え要因になることも多くあります。また、中長期的に配当を継続したり増額している銘柄は、背景として利益が安定成長していると評価され、株価が安定的な上昇傾向となることもあります。低金利環境が続く日本においては、株式を長期保有し配当をしっかりと受け取ることも有効な投資手法と言えます。

株価のことは株価に聞く、「テクニカル分析」を活用する

 一方、テクニカル分析とは、「株価は投資家心理なども株価形成に反映され、こうして決定された市場価格は全ての情報を織り込んでいる」という前提のもと、過去に発生した株価の動き方をもとに、将来を予測する分析手法です。

 テクニカル分析の一例として一定期間の株価の平均である移動平均線を利用する方法があります。移動平均線は、株価のブレを均一にして方向性(トレンド)を示します。また、経験則として、移動平均株価は上昇局面においては株価を下支えする位置に、下落局面においては株価の上値を抑える位置にあることが多く、上値や下値のメドとして考えることもできます。

 さらに、期間が違う移動平均線が交差することを、トレンド変化のシグナルととらえる使い方もよく知られています。短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上に抜けることを、上昇相場入りのシグナルである「ゴールデンクロス」、短期の移動平均線が長期の移動平均線を上から下に抜けることを、下落相場入りのシグナルである「デッドクロス」と言います。

 そうしたシグナルを確認しながら実際の投資タイミングを判断することも重要です。テクニカル分析にはこの他にも様々な手法がありますので、ご興味があれば研究して頂きたいと思います。ただし、テクニカル分析は過去の株価の動きを表現しているものであり、将来の動きを保証するものではありません。「ファンダメンタルズ分析」と「テクニカル分析」の両方をうまく活用することで、株式投資を行っていくことが大切であると言えるでしょう。

(※投資講座は随時更新。次回も「株式の魅力」をテーマに掲載します)

【プロフィル】大坂隼矢(おおさか・じゅんや)

野村証券 投資情報部
2010年に野村証券入社。3ヶ店の支店業務を経て、2015年3月より投資情報部。現在は個人投資家向けに投資情報の提供を行う。

Read more