《AIスピーカー》スマホも時代遅れ? 市場拡大で競争熾烈

ニュース解説
米グーグルのAI搭載スピーカー「グーグルホーム」(AP=共同)

 「AI(人工知能)スピーカー」が脚光を浴びている。アマゾン・コムなど米IT大手が先行しているが、ここにきて日本企業も続々参入の動きをみせている。AIと音声認識技術の飛躍的な発展を受け、「ポスト・スマートフォン」の本命ともいわれるガジェットのすごさと課題、今後の見通しを整理してみた。

まるで「賢者」との対話?

 AIスピーカーとは、文字通りAIを搭載したスピーカーだが、音楽を再生できるだけではない。話しかければ、もちろん好きな音楽も流してくれるし、家電を操作できたりする。知りたい情報を瞬時に検索したり、質問に答えてくれる。まるで賢者と対話しているかのようで、「スマート(賢い)スピーカー」とも呼ばれるゆえんであり、スマホを超える存在とも期待されている。

 AIスピーカーが近年一気に注目された理由は、もちろんテクノロジーの進歩だ。最たるものが「音声認識技術の飛躍的な向上」(大手電機メーカー幹部)。2014年にアマゾンが発売し、AIスピーカーのブームに火を付けた「エコー」には、7つのマイクが搭載され、騒がしい部屋でも正確に音声を聞き分ける。

 アマゾンに対抗すべく米グーグルが開発した「ホーム」は、最大6人の声を聞き分けられる。まるで10人の話を瞬時に聞き分けたとされる聖徳太子の伝説のようではないか。

 AIの進化も見逃せない。多くのスマホにも音声認識機能は備わっているが、正しく音声をとらえられず、見当違いのワードを検索してしまうこともあった。AIスピーカーは音声が生命線とあって、ディープラーニング(深層学習)に磨きがかけられ、ユーザーの言葉をより正確に認識できる。天気予報や料理のレシピなど知りたい質問にも的確に答えてくれる。

 ボタンやキーボードを操作する必要がない「ハンズフリー」のデバイスであることも、パソコンやスマホの次世代の機器と注目されることにつながっている。

 アマゾンやグーグルに負けじと、マイクロソフトは今年秋に発売を予定し、もともと音声認識技術に強みを持つアップルを含め、米IT大手はこぞって開発にしのぎを削る。米国ではすでに1000万台をはるかに超えるAIスピーカーが販売されたとの推計もある。

巻き返しを期す日本メーカー

 米国勢に後れをとったが、日本企業もここにきて開発が本格化してきた。

 無料通信アプリのLINE(ライン)は、親会社の韓国IT大手ネイバーと共同開発したAI「クローバ」を導入した「ウェーブ」の予約受付を7月に始めた。話しかけるとネットを介して商品購入や家電操作などができる。

 正式版は今秋発売予定で、先行版は音楽再生や天気予報など機能が限定されているが、ラインは「社運を賭ける」(枡田淳取締役)意気込みだ。

 通信キャリアではNTTドコモもAIスピーカーを開発し、ソフトバンクはロボット開発ベンチャーと提携して年内に発売する。電機ではシャープやソニーも参入を計画している。

 AIスピーカーが産業界で広く注目を集めるのは、あらゆるものがネットワークにつながる「モノのインターネット(IoT)」のプラットフォームになり、ライフスタイルを一変する可能性があるためだ。KDDIはグーグルと組んで物販サービスへの展開を模索し、NTTグループはトヨタ自動車などメーカーへの展開を狙っている。

乗り越えるべき課題も山積

 ただ、精度は日進月歩で高まっているとはいえ、まだ「聞き間違え」をしたり、AIスピーカーも完璧な存在にはなっていない。日本など非英語圏の国では言語の多様さも普及の壁になる。

 携帯音楽プレーヤーのように音楽再生には向いていても、「公共の場所や静かな部屋で情報を検索するには、マナーの問題もあるし、まだスマホの方が使い勝手がいい」(ITアナリスト)との指摘もある。

 これまでもアップル・ウォッチなどの腕時計型端末、グーグルの眼鏡型端末など、「ポスト・スマホ」を期待させるデバイスが次々登場してきたが、今ひとつ市場に浸透しきれていない。

 果たしてAIスピーカーはさまざまな課題をクリアし、誰もが手放せないアイテムとなるのか。まだしばらく見極める時間が必要といえそうだ。

 《メモ》AIスピーカーが秘める可能性は消費者をワクワクさせる。一方で、「ポスト・スマホ」とされる注目度ゆえに、各国の開発競争は熾烈で、その優劣と正否は、政府の成長戦略も左右しかねない。日本企業もようやく本腰を入れ始めたが、総務省の後押しなど官民挙げての取り組みが一層必要となりそうだ。(SankeiBiz 柿内公輔)