韓国製造業の憂鬱 自慢の造船事業、受注合戦“衝撃の敗北” 成長力は枯れたのか

 
台湾の港に停泊する韓国・現代グループのロゴを印したタンカー(ロイター)

 韓国の製造業で、将来不安が頭をもたげてきた。得意分野だったはずの造船で中国企業との受注合戦に敗北。ほかの業界を見渡しても先進国のトレンドである産業ロボットの導入は遅れているという。韓国メディアは、大企業の正社員労組が既得権益にしがみつき、生産性向上のための労働政策も後退していると批判している。韓国経済の成長力は枯れたのか。

 衝撃の敗北

 「世界の主導権をしっかり握っていると評されていただけにショックを隠せない」。韓国の大手紙、朝鮮日報(日本語電子版)が、現代重工業の落胆を伝えた。フランス海運大手「CMA CGM」が導入する世界最大級のコンテナ船9隻の受注を逃したのだ。

 入札には現代のほか、サムスン重工業、大宇造船海洋も参加していたが、受注したのは中国の造船所2カ所。業界は「中国の技術と価格競争力を世界大手の海運会社が認めたという点で衝撃を受けている」と同紙は解説する。

 聯合ニュースによると、敗れた韓国勢3社は「手持ち工事量が世界1~3位」(7月末時点)。同国が誇る主要産業だが、業界関係者は「中国政府の政策支援の中で中国が韓国造船3社と競争力の格差を急速に狭めている」と危機感を募らせているという。

 中国はすごいぞ

 「韓国の主力産業の大部分は世界市場でシェアが下落する」。中央日報(日本語電子版)によると、韓国産業研究院は「既存製品の生産と輸出が大幅に増えるのは難しい」と指摘する報告書を公表した。

 報告書は、2015年から25年にかけて韓国の各業界の世界シェアがどう変化するか予測。自動車は5.2%から3.8%に、造船は36.2%から20.0%に、家電は3.1%から2.5%にそれぞれ低下するとしている。上昇するのは半導体や防衛産業などごく一部だ。

 後退の主な要因として高い人件費など生産環境の弱さがあると指摘。その上で「中国はすべての産業で質的高度化を推進している。今後、中国が韓国のさらに強力な競争相手に浮上する」と警鐘を鳴らす。

 衰退を避けるには、生産性の向上が欠かせないという。まるで日本と同じだが、その日本にも後れを取っているとの分析もある。

 実は時代遅れ

 「韓国の製造業のロボット密集度は世界最高水準」。中央銀行の韓国銀行による報告書を取り上げたハンギョレ(日本語電子版)は誇らしげに報じた。

 韓国製造業の従業員1万人当たりのロボットは、2015年で531台で世界最高となった。シンガポール(398台)や日本(305台)、ドイツ(301台)が続く。

 しかし、記事は問題点の指摘も忘れてはいない。韓国で使われている技術は、最先端の米国に4.2年遅れているという。日本と欧州連合(EU)の遅れはそれぞれ1.4年で、韓国よりも高度だった。

 生産性向上にロボットへの投資は必要だが、韓銀は「働き口の縮小と所得不均衡を深刻化させる」懸念もあるとみている。韓国では大企業の正社員と非正規社員や中小企業社員との格差問題が深刻化しているだけに、一筋縄ではいかない。

 比較的所得の高い大企業正社員への風当たりは強く「毎年7~8%の賃金引き上げを求め労働争議を繰り返し」「企業にばかり負担を」強いている、と朝鮮日報(日本語電子版)は指摘する。

 そんな中で文在寅政権の労働政策も迷走気味だ。前政権が成長力を高めるために成果を出せない社員を解雇しやすくする規制改革を決めたが、これを撤回した。働く人に優しいようだが「大企業の正社員労組の既得権」を守ったに過ぎないと批判されている。

 一方、与党の共に民主党は、すべての法律で「勤労」を「労働」に変更する改正案を提出した。勤労という言葉は、日本の植民地時代の「遺物」だから、というのがその理由。成長力を取り戻すための改革は進みそうにない。

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