《投信を知る》(1)〈資金性の把握が重要〉「投資の大原則」を念頭に

投資講座
資金の使途別の3分類

 2017年に入り、米国の代表的な株式指数であるNYダウが歴史上初めて20000ドルを突破しました。日経平均株価についても20000円を上回る場面が見られ、政治や地政学的リスクが意識されながらも日米の株式市場は比較的堅調な推移となっています。こうした活況な株式市場を目にして、資産運用を始めようと考えた方もいらっしゃると思います。

 ただし、一言で「資産運用」といっても、代表的な運用商品は株式や債券だけでなく、さまざまな資産を組み合わせて投資を行う投資信託やファンドラップなど、実に多様な商品・サービスが存在します。投資信託(株式型)というカテゴリー内だけでも5988本(※投資信託協会、7月末時点)あります。せっかく投資をしようと思い立っても、選択肢が多いために「何に投資していいのかわからない」と迷っている方も多いのではないでしょうか。

 そこで、これから連載させていただく投資講座では、運用における選択肢の一つである「投資信託」の魅力についてお伝えします。貯蓄から投資への第一歩が踏み出せない、といった読者の皆さんにもわかりやすく解説いたしますので、ぜひお付き合いいただければと思います。(みずほ証券 石隈鉄太郎)

日本では欧米ほど資産運用が根付いていない

 日本銀行による17年第1四半期の資金循環統計(速報)で日本の家計金融資産構成を見ると、低金利環境にもかかわらず現預金が約52%と半分以上を占めていることがわかります。一方、資産運用の中心となる株式等や投資信託はそれぞれ10.0%、5.4%と非常に低水準で、この比率は過去数年間大きくは変化していません。これは欧米と比較しても顕著で、日本に資産運用が根付いていないことは一目瞭然です(米国…株式:35.8%、投資信託:11%)。

大切なのは「原則を理解して目的を定める」こと

 昔から日本では「投資は難しい。なんとなく怖い」といったイメージを持っているため、多くの方は「投資を行うには、投資商品の良し悪しがわかる専門家でなければならない」と考えてしまいがちです。しかし、投資は単に「いい商品を選んでおけば良い」というものではありません。資産運用で大切なのは、「投資の大原則」をしっかりと理解し、将来の目的に合った運用を行うことです。このことは資産運用を始めるうえで大変重要な概念ですので、初回にあたる今回では、投資信託についてご説明する前に「投資の大原則」について整理したいと思います。

資金を使用目的別に分類する 

 「投資の大原則」とは「資金を使途別に色分けしたうえで運用目的を考える」ということです。ここでは一例として、資金を3つに分類したものを図に示しました。

 まずはAの部分です。こちらは日常生活や緊急時への備えとして必要となる資金です。安定性や換金性の高さを重視すべき部分で、このような資金を、日常生活のベースとなる資金という意味で「ベース資金」と呼んでいます。

 次はBの部分です。資金使途が明確で、今すぐ、ではなく「将来(10年、20年先)」必要な資金が当てはまります。老後のライフスタイルの維持や次世代への承継、子どもや孫の学費、リフォームの備えなど、将来における支出の中心となることから「コア資金」と呼んでいます。

 最後にCの部分です。こちらは具体的な資金使途が決まっていないため「余裕資金」と呼んでいます。

 上記を参考にご自身の資金を色分けしてみてください。「コア資金」に当たる計画的な資金の割合が高いことにお気付きになると思います。

コア資金こそ運用で増やすべき

 次に、資産運用に向いているのはどの資金なのかを考えます。一見すると、上記の分類で示した余裕資金だけが運用すべき部分に見えます。ベース資金は日常生活には欠かせない資金ですから、投資には適していないでしょう。コア資金についても、将来使う予定があるため元本の毀損は困ります。そのため、投資には不向きであるように思われます。

 しかし、本当にそうでしょうか。前述の通り、コア資金は10~20年先に必要になる資金です。実は、この長い期間を活用することで、投資リスクの抑制や安定的なリターンが期待できるのです。このような理由から、コア資金の運用は中長期的なライフプランの設計に極めて重要な要素である考えられます。

 ただし、時間を味方につける方法を知らないと、投資で安定した成果を上げることができず、大切な資金を減らしてしまうかもしれません。「どうすればいいの?」という声が聞こえてきそうですが、このことは次回以降で詳しくお伝えします。

目的に合わせて投資を考えよう

 最後に、それぞれの資金分類ごとに資金使途を明確にしましょう。これは主にコア資金の部分が該当します。使用用途をはっきりさせることで、目的の達成に必要な期間や金額の規模が見えてくるはずです。そのためには、「何の目的のために」「どの位の期間で」「将来どの位の資金が必要となるのか」を書き出してみてください。これらを明確にすると、より具体的に投資を考えることができるはずです。

 例えば、「孫の教育費のために、10年後に1000万円ほど渡したい」と考えたとします。そのための手元資金は現在700万円で、毎年の資金の積み立ては考えていません。この例で言えば、「目的」は教育費の確保、期間は10年間、必要な投資成果(リターン)は300万円ですから、10年間で700万円が1000万円になることが期待できる運用商品(つまり、年率3.6%程度の投資対象)を探すことになります。

 このように、投資は(1)資金の色分けをしっかりと行い、(2)その目的・期間・運用成果を明確化させたうえで、(3)運用商品を選別することが重要です。読者の皆さまには今回ご紹介した「投資の大原則」を念頭に置いたうえで資産運用を行っていただきたいと思います。

 次回はこの大原則を前提に、運用商品の一つである投資信託についてより詳しく解説していきます。

(※投資講座は随時更新。次回も「投信を知る」をテーマに掲載します)

【プロフィル】石隈鉄太郎(いしくま・てつたろう)

みずほ証券リテール・事業法人部門商品企画部次長
2002年新光証券(現みずほ証券)入社。支店営業を経て、04年より投資信託関連業務に携わり、旧DIAMアセットマネジメント(現アセットマネジメントOne)や旧新光投信(同)への出向等を経て、16年より現職。現在では、投資信託を中心とした幅広いプロモーションに従事。

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