《投信を知る》(3)〈世界株式投資の成功のカギ〉長期継続投資の重要性

投資講座

 前回は、経済成長と株式市場における関連性について言及し、人口増加を背景に世界経済は拡大が予想されることから、世界の株式市場に目を向けるべきだとお伝えしました。しかし、単純に「世界株式へ投資をすればよい」というわけではありません。世界株式投資を成功させるにあたり重要なポイントは①「長期継続投資」②「グローバル分散投資」です。この2つを世界株式投資と組み合わせることで、運用目的の達成に近づくと考えられます。今回は①の長期継続投資についてみていきましょう。(みずほ証券 石隈鉄太郎)

長期継続投資でパフォーマンスの安定化を狙う

 長期継続投資は、多くの投資指南書で解説されている重要な概念です。これを意識して運用することでパフォーマンスの安定化が期待できます。

 たとえば、世界株式(MSCIオールカントリーワールドインデックス)に投資を行ったとしましょう。図は、1997年8月末~2017年8月末の期間において、一日ずつずらして横軸に示している各期間の長さだけ投資した場合のリターンについて、最大・最小値を示しています。短期で最も高かったリターンは年率69.7%でしたが、最も低かった場合はマイナス59.1%と、その差は約129%になります。

 一方、長期投資を行った場合は、リターンの最大値が年率9.1%、最小値がマイナス4.5%、その差は13.7%と短期と比較して小さくなります。

 このように、長期投資によってリターンのブレ幅が相対的に小さくなり、パフォーマンスの安定化につながります。リターンの大きなブレを抑えるためにも投資の時間軸を長くもち、運用目的の達成を目指してはいかがでしょうか。

投資はタイミングよりも長期保有

 投資を始めたら長期にわたり「継続保有」することも大切です。皆さまの中には「長期投資といっても、結局は売買タイミングが最も重要」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 しかし、的確にタイミングをとらえて投資を行うのはプロでも難しいと言われています。そのため、投資する上での一つの対抗策として大きな上昇をいかに取りこぼさないかに着目しましょう。

 図をご覧ください。これは1997年8月末から2017年8月末の期間で、上昇率の高い日を除いた場合、パフォーマンスがどう変化するのかを表しています。

 一番左の棒グラフは全期間保有し続けた場合で、同期間の累積リターンは210.2%でした。二本目の棒グラフは、上記期間中における日次リターンの上位5日分を除いたリターンを示しており、この場合の累積リターンは102.3%となりました。たった5日分の上昇を取りこぼしただけでもパフォーマンスは大きく落ちてしまうことがわかります。

 では、その5日間はどのような期間だったのでしょうか。マーケットを完全に予測するのは不可能ですが、マーケットの急上昇は、マーケットの急落直後に多くみられます。何かのきっかけで価格が急落すると、損失拡大の懸念から、より多くの投資家が売りに転じます。

 しかし、このような局面では資産の持つ本質的な価値から大きくかい離しているため、割安と感じた投資家は買入れを行い、ある時マーケットが大きく反転することがあります。個人の投資家はこのようなタイミングを瞬時にとらえるのは難しいため、パフォーマンスを下げないためにも長期保有によってこのような上昇を逃さないことが肝心です。「投資は忍耐」と言われますが、まさに長期継続投資の大切さを物語っているのです。

複利効果

 実は、長期継続投資によって得られるメリットはこれだけではありません。もうひとつ忘れてはいけない大事なポイントは「複利効果」です。複利とは、投資元本にその年の利益を加えたうえで、これを翌年の元本として運用することをいいます。前年に稼いだ利益に対しても利益が加算されるわけですから、まさに雪だるま式の構図になります。

 年率10%のリターンが安定して期待できる投資信託を2つのパターンで運用したとします。一つは毎年の利益を上乗せして運用した場合(複利)、もう一つは毎年の利益を取り崩して当初の元本だけを運用した場合(単利)です。

 上記の例で20年後のパフォーマンスを計算すると、単利での累積リターンは200%であるのに対し、複利では約573%と非常に大きな差が生じます。リターンを引き出すことなく再投資をすることで、投資効果を最大限享受できるのです。

毎月分配型の問題点

 しかし、残念なことに日本には「毎月分配型」と呼ばれる複利効果が剥落する投資信託が散見されます。投資信託協会によると、毎月分配型投資信託の残高(17年8月時点)は約32兆円と国内の公募投資信託の残高約90兆円のうち、全体の約36%を占めています。分配金を毎月必要としないお客さまにおいてものみに焦点があたり、年金の付加的な要素として選好されました。

 金融庁はこうした現状を変えるべく「顧客本位の業務運営に関する原則」を採択し、銀行や証券会社などに顧客第一主義の営業(いわゆるフィデューシャリー・デューティー)を強く推進させています。これに合わせて、森金融庁長官は講演にて「毎月分配型では複利のメリットが享受できないことをお客さまに理解していただいた上で投資判断をしていただくのが『顧客本位』である」と明言しています。

 長期的な資産形成を考える際には、毎月分配型はふさわしくないと言えます。「定期的な分配金がどうしても必要」ということでなければ、できるだけ分配頻度の低い投資信託を長期で継続してお持ちいただくことをお勧めします。

(※投資講座は随時更新。次回も「投信を知る」をテーマに掲載します)

【プロフィル】石隈鉄太郎(いしくま・てつたろう)

みずほ証券リテール・事業法人部門商品企画部次長
2002年新光証券(現みずほ証券)入社。支店営業を経て、04年より投資信託関連業務に携わり、旧DIAMアセットマネジメント(現アセットマネジメントOne)や旧新光投信(同)への出向等を経て、16年より現職。現在では、投資信託を中心とした幅広いプロモーションに従事。

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