中国海外投資は選別時代に 食料確保 良質な食品ブランド買収

提供:ブルームバーグ
中国資本のバン・ディーメンズ・ランドが経営する豪タスマニアにある酪農場の搾乳施設(ブルームバーグ)

 中国内で肥沃(ひよく)な耕地が減り、14億人という国民の食料消費量が増えていることを背景に、同国の農業関連会社は数十年前から海外の土地の購入・リースに従事してきた。当初の投資先には発展途上国が多かった。そしてこうした投資は、世界的に穀物価格が高騰した2006~08年の世界食糧危機から加速した。

 最近では中産階級が消費量を増やしているだけでなく、高品質で幅広い食品を求めるようになり、一層の食料確保が求められている。中国は既に、世界で流通する豚肉および全脂粉乳の約50%、大豆とコメの約3分の1を消費している。世界食糧危機が和らぐにつれて中国企業は投資の対象をより進んだ経済国にシフトし、国内の大都市で高く売れる製品を生み出す生産業者や農場を獲得し始めるようになった。

 ◆利益率の高さ重視

 米国のシンクタンク、アメリカン・エンタープライズ・インスティテュート(AEI)とヘリテージ財団がまとめたデータによると、中国企業が05年以降海外で行った農業関連投資は総額約520億米ドル(約5兆8580億円)で、食品業界関連の案件は過去6年で4倍に増えた。

 KPMGの世界アグリビジネス部門責任者を務めるイアン・プラウドフット氏は「中国企業の間でますます目立つ傾向は、どんな食品事業でもいいから買収するのとは違い、本当に良質な食品事業の買収を求めているという点だ。ただ、生産施設を手に入れたいのではなく、ストーリー性やブランドを求めている」と指摘した。

 上海鵬欣集団は、ニュージーランドの酪農施設とブラジルの穀物トレーディング事業を保有する中国企業だ。会社の方針だとして匿名で取材に応じた広報担当者によると、同社は上海のような市場で迅速に利益を出せる先進国の有名ブランドを探している。確立した品質を求める方向への転換で、スーパーマーケットへの空輸が可能な生鮮品や、飼育に広大な土地を要する食肉など利益率の高い製品が重視されるようになった。

 投資会社ムーンレイク・インベストメンツは16年3月にオーストラリアの酪農企業、バン・ディーメンズ・ランド(VDL)を2億8000万豪ドル(現行為替レートで約248億円)で買収した。オーストラリアのタスマニア島から生乳を中国東部の寧波に直接空輸することで、この島の「クリーンで緑豊か」なイメージを最大活用する狙いがあった。

 過去には、中国企業が発展途上国の耕地を買い取ったが、穀物供給を拡大させられず、現地にも恩恵をもたらさなかったケースもある。モザンビーク政府は内戦で荒れた土地の生産性回復を目指し中国・湖北省と提携し、同省に拠点を置く万宝糧油がコメおよびトウモロコシの生産に向け2億5000万米ドルを投資した。コメ栽培の働き口が得られると聞いていたが、それは実現していないと地元農民のシルバ・ムテンバさんは話す。リンポポ川河口地域の非政府団体の統率組織責任者、アナスタシオ・マタベル氏によれば、ムテンバさんを含む農家8000世帯は5年前に農地へのアクセスが絶たれ、抗議活動に発展する事態となった。

 ◆続く所得水準向上

 人口の増加や所得水準の向上が続く中、中国企業が海外の農場や食品事業を買収する動きは一段と加速する公算が大きい。将来的に安価な食料を確保したいのであれば、中国は同時にアフリカ、アジア、南米で今後増えていく人口の分も余計に確保していく必要があるかもしれないことを、モザンビークでの万宝糧油のコメ農場のような事例は示している。(ブルームバーグ Emma O’Brien、Borges Nhamire)