“男余り”中国婚活サイトの甘い罠 女性に追い込まれたIT起業家の自殺が波紋

 
北京で結婚記念写真の“水中撮影”をする中国人カップル。経済成長著しい中国ではお金をかけた派手な結婚も増えているが…=8月19日、ロイター

 あるIT起業家の死が中国社会で波紋を呼んでいる。男性は婚活サイトで知り合った女性と結婚したが、わずか1カ月余りで離婚。その後、インターネット上に女性の非道を訴える“遺書”を残して自殺した。男性に何が起きたのか-。(中国総局 西見由章)

 2000万人のユーザーがいたとされる中国の無料通話アプリ「WePhone」。その開発者である蘇享茂氏(37)が9月7日、建物の屋上から飛び降りて自ら命を絶った。中国紙の新京報によると蘇氏は前日、ネット上に残した文書の中で、婚活サイトで知り合い離婚した女性から多額の慰謝料や不動産の譲渡を要求され、金が用意できずに追い込まれていたことを告白していた。

 文書によると、離婚した元妻は「WePhone」が法律上グレーゾーンだと非難し、おじが警察官であることを利用して「サービスを停止させて罰金を科し、破産させる」と脅迫していたという。

 元妻は蘇氏の「脱税行為」も指摘。離婚にあたり、精神的苦痛に対する慰謝料として1000万元(約1億6千万円)と、リゾート地である海南省三亜のマンションの譲渡を要求していたと蘇氏は訴えている。

 蘇氏は7月18日に署名された離婚協議書もネット上で公開した。協議書は蘇氏が無条件で三亜のマンションを女性に譲渡しなければならないと規定。また蘇氏は無条件で1000万元の慰謝料を女性に支払うとし、うち未払いの340万元については120日以内に支払うことを要求。実行できなければ毎日10万元(約160万円)の利息が発生すると明記されている。

 蘇氏が死去した2日後に遺族が発表した声明によると、蘇氏は9月7日の早朝5時ごろ、「元妻の嫌がらせに耐えられず」飛び降り自殺を図った。死亡する数時間前には元妻からの脅しと非難のメッセージが次々と届いていたという。

 蘇氏と元妻は今年3月に婚活サイトで知り合い、6月7日に結婚した。蘇氏は妻に海南のマンションや電気自動車を買い与えるなどしたが、1カ月余り後の7月18日には離婚が成立した。

 蘇氏は、結婚後に元妻の態度が豹変したと主張。また蘇氏は初婚だったが、元妻は過去に短期間の結婚歴がありながら婚活サイトも元妻もその情報を蘇氏に知らせていなかったという。

 新京報によると、中国では婚活サイトを舞台にした結婚詐欺事件がたびたび発生。2011年には北京の男が婚活サイトで香港籍と偽り、6人の女性から600万元近くをだまし取る事件が起きた。またマルチ商法グループが婚活サイトを悪用するケースもあり、重慶の警察当局は今年、約300人の被害者を出した詐欺事件に関与した犯行グループ70人を検挙した。

 中国では1970年代末に始まった人口抑制策「一人っ子政策」の結果、女児より男児を望む傾向が強まり、今後30年間で結婚適齢期を迎える男性の数は女性を少なくとも3000万人上回るとされる。こうした“男余り”の状況で、適齢期世代の結婚問題は社会の安定を揺るがしかねない。

 今回クローズアップされた婚活サイトの問題を受けて、中国政府の民政省は18日、青年の婚姻関連政策に関する「指導意見」を公表。“婚活市場”の規範化を求め、結婚紹介所における実名登録制を徹底し、結婚詐欺などの違法行為に厳しい打撃を加えると強調している。ただ専門家の間からは、婚活サイトが会員情報の真実性を審査するのは現実的ではないとの声も上がり、問題解決は容易ではなさそうだ。

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