米韓、商談で終わった26分 事実上のコリア・パッシング サプライズことごとく空回り

 
8日、ソウルの韓国国会で演説するトランプ米大統領(AP)

 【ソウル=桜井紀雄】トランプ米大統領は訪韓中、盛んに韓国を持ち上げ、韓国の頭越しに日中首脳とだけ北朝鮮問題を論議する「コリア・パッシング」は「ない」と明言した。だが、文在寅大統領との2者会談は30分に満たず、ビジネスライクな姿勢を隠しもしなかった。安倍晋三首相との“蜜月”との格差を図らずも浮き彫りにした。 

 トランプ氏が8日の国会演説で「世界4大女子ゴルフ選手は皆、韓国出身だ」と韓国女子プロゴルファーの活躍を称賛すると、議場は拍手に沸いた。「奇跡」の経済発展など韓国をたたえるのに言葉を惜しまず、拍手は20回を超えた。

 演説前には、前大統領、朴槿恵被告の釈放を訴えるプラカードを持ち込もうとした議員が警備員につまみ出される一幕もあった。

 国会前では、トランプ氏の訪韓に反対する団体が「韓国から出ていけ!」と叫んだ。反対派はトランプ氏の行く先々でデモを計画したが、2万人近い警察を動員し、トランプ氏の目にとまらないよう力で押し込めたのが現実だった。

 文政権を悩ませたのは親米・反米に二分した国論だけではない。拉致被害者家族との面会を実現させ、対北圧力で一枚岩を見せつけた訪日と比べ、1泊だけの訪韓に不満を抱く韓国世論の突き上げを受けていた。

 文氏の提案で、トランプ氏は8日早朝、南北軍事境界線がある板門店の非武装地帯(DMZ)のサプライズ視察を試みたが、悪天候で断念。先回りしていた文氏が待ちぼうけを食った。

 文氏は7日にもトランプ氏の最初の訪問先の米軍基地で待ち受けるサプライズを演出していた。様子を携帯電話で動画撮影していた韓国側報道官が米側にトランプ氏を撮るなと制止された。前線の将兵らと分かち合うべき時間に割り込んだ文氏一行への不信感とも読み取れる。その場でトランプ氏は「文氏と貿易について会談する。米国に多くの雇用が創出されること。それが私が来た一番の理由の一つだ」とぶち上げた。会談後の記者会見では「韓国は数十億ドル(数千億円)に達する米国製兵器を発注する」と成果を強調した。

 2者会談は26分間で終了した。通訳を除くと実質的な協議は十数分間にすぎず、初日のゴルフだけで2時間半以上を費やした安倍氏とは比ぶべくもない。

 会談で軍事オプションの議論について、韓国側は「具体的にはなかった」としている。韓国国民が最も不安を持つ有事の際、北朝鮮に対し、ともにどう戦うのかという最大の課題を避けたことになり、本質的には、コリア・パッシングと変わるところがない。

 韓国の専門家は「互いに隔たりを見せないための会談だった」と分析する。文氏と対北観で大きな違いを見せてきたトランプ氏は「韓国は単なる長年の同盟国以上」とのリップサービスで表向き韓国世論を安心させ、先端兵器の売りつけという実益を手に、北朝鮮問題で最大の協議相手である中国に向かった。

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