2010.2.24 05:00
■労務人事部人材開発グループマネージャー・金子禎則さん
2010年春の新卒採用には、通常に比べ2倍程度の応募者数があったという。「電力業界は安定している」といった志望動機で門をたたいた学生も多かったようだが、労務人事部人材開発グループマネージャーの金子禎則(よしのり)さん(46)は「東京電力では会社説明会を通じてそんな固定観念を取り除くことに力を入れる」と明言する。
電力の自由化や少子高齢化社会の進展に加え、海外への生産拠点の移転が進んでいる点を踏まえると、「待ち」の姿勢だけでは電力会社が成長路線を歩むことは難しい。顧客の本音を探り出し、それに合ったサービスが重要になってくる。
このため、「電力業界の人材にはチェンジとチャレンジ、コミュニケーションという英語の頭文字から取った『3C』が強く求められている」と金子さん。決して安定志向では務まらないことを強調する。
温暖化対策の一環として発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない原発に対する注目度が世界的に高まるなど、環境を切り口とした海外でのビジネスチャンスは広がっている。こうした動きに対応するためにも、3Cが重要な役割を果たすというわけだ。
金子さん自身も入社後はチャレンジの連続だった。電気工学科の出身で、長く変電所の建設に携わっていたが、後にネットコンテンツの提供を行う吉本興業との出資会社(現在は解散)に出向するなど、予想していなかった職歴を歩んだ。「1つの部門だけでなく、いろいろな経験を通じてモチベーションを高めていく」のが、「新たな電力マン像」とする。
また、当然のことだが電力会社には電力の安定供給という使命がある。しかし、「安定供給は生易しくなく、つらさを伴う」と金子さん。そのことを「学生は十分に認識できない」のが現状だ。
そこで、文系・理系を問わず採用セミナーを通じて力を入れているのが、最前線にいる中堅・若手社員との交流。昨年からは技術系志望者の“現場配属”も取り入れ、発電所や変電所の設備と作業を見てもらうことで、電力の安定供給にどれだけ労力が必要なのかを実感してもらっている。
業績の低迷によって多くの企業が新卒採用を抑制する中、東京電力は高水準の採用を行っている。10年春採用の実績は前年を300人上回る1092人に達した。原子力発電所の新増設が相次ぐことを受けて、11年春も1100人と強気の採用計画を描くが、“安定”を求める生半可な気持ちでエントリーするならば、狭き門となりそうだ。(伊藤俊祐)