2010.7.1 09:04
今、台湾系や日系などの外資系企業を中心に、中国の労働者による空前の「賃上げ闘争」が広がりを見せている。
こうなったことの背景には、次のような歴史的経緯があろう。
過去十数年間、中国はずっと、「労働力の安さ」を武器にして外資の導入や対外輸出の拡大を図り経済の高度成長を牽引(けんいん)してきた。そのためには当然、労働者の賃金水準を低く押さえつけておく必要があった。中国の高度成長は結局、労働者の利益の犠牲の上で成り立ったものである。
しかし、このような「低賃金化成長戦略」が長きにわたって実施された結果、経済面での内需不足と、社会面での貧富の差の拡大といった弊害が生まれた。そして、内需不足は逆に経済の持続的成長の足かせとなり、貧富の格差の拡大は民衆の不満を募らせ、社会不安の高まりにつながった。
2008年の世界同時不況以後、輸出の継続的拡大をもって経済を成長させていく戦略自体が限界にぶつかって頓挫した。その時から、いかにして内需を拡大させるかが中国経済にとっての死活問題となった。
こうした中、中央政府の主導で、今年2月あたりから全国各省で最低賃金の引き上げが相次いだ。温家宝首相はまた、「より公平な社会の富の分配」を政府の重要な仕事の一つとすることを宣言した。賃上げを求める中国の労働争議はまさにこのような背景の中で起きたものであるが、政府が今までの方針から一転して黙認の姿勢を示したことが争議の広がりを助長した最大の要素である。
つまり中国政府は、自らの進めた「低賃金化成長戦略」のつけを外資系企業などに押し付けることにした。賃上げさせることによって労働者の不満を解消しながら、それを起爆剤にして経済面での内需拡大を図っていく魂胆である。