新たな電源構成の選択肢をめぐる総合資源エネルギー調査会の議論が大詰めを迎えたが、政府が目指す脱原発依存には課題も多い。調査会の議論では、経済成長の下支えやエネルギー安全保障の観点から原発維持を訴える声が強く、政府内でも原発の必要性を認める声が目立つ。一方、再生可能エネルギーの普及により早期の脱原発を求める声もあるが、その実効性には疑問符が付く。エネルギー戦略の策定にあたり、政府には日本経済の将来を見据えた冷静な判断が求められる。
「原発を止めればエネルギーのコストが上がり、企業の海外移転が進む。日本経済が停滞する」。これまでの調査会の議論では、複数の委員からこう懸念する声が相次いだ。
総発電量に占める原発の比率を低減した場合、代替の火力発電の燃料費が増加するなどして発電コストが上昇し、電気料金の大幅な値上げを招きかねないからだ。
調査会で示された試算では、2030年に原発をゼロとした場合、2人以上世帯の月額電気料金は、現在の電源構成を維持したケース(約9900円)よりも77~133%上昇し、1万7600~2万3100円に跳ね上がる。
電力価格が上昇すれば、企業の生産活動が制約を受け、消費の落ち込みも想定される。試算では原発ゼロの場合、30年の国内総生産(GDP)は、現状の電源構成を維持した場合よりも5%程度下押しされる。逆に原発比率を35%に拡大すれば、下押しは最大でも2.5%にとどまる見通しだ。