□廣瀬量哉・みずほ銀行直投支援部調査役
【問題】
自動車部品製造会社A社のB取締役は、自社の海外生産拠点展開について悩んでいた。同社は中国に工場があるのだが、人件費が毎年上昇しており、工場ではワーカーの確保が難しくなってきている。今後も生産拠点は中国だけで良いのだろうか。
そこで日本から比較的近い東南アジア諸国連合(ASEAN)各国を視察して、どの国に進出するべきか考えてみようと決めた。10年前にA社が中国進出を決めたときは、進出先は中国という前提で進めたが、今回はどこの国に進出したらよいのかというところから検討する必要があり、何に注目したらよいか、経営コンサルタントにアドバイスを求めることにした。
【対策】
海外に工場を設立するための検討ポイントを(1)ヒト(2)モノ(3)カネという観点で整理してみましょう。
『ヒト』という観点では、(1)人口・人口構成・失業率(2)賃金・賃金上昇率(3)ストライキ・離職率(4)言語-といったことに注目する必要がある。(1)人口・人口構成・失業率を見ることで、「今」と「将来」、ワーカーを確保することができるのか検討することができる。
(2)賃金・賃金上昇率を見ることで、「今」と「将来」のワーカー賃金を検討することができる。通常、各国には「最低賃金」という法律上、最低限支払いをする必要がある賃金が決まっている。実際にワーカーを雇用する上で「最低賃金」で雇用できるのか、「最低賃金」に上乗せしないと雇用できないのかについても調査した方がいい。
(3)ストライキ・離職率を見ることで、日常の操業がやりやすいのか検討することができる。(4)言語を見ることで、技術指導や研修のしやすさ、海外拠点とのやり取りのしやすさを検討することができる。
『モノ』という観点では、(1)原材料調達(2)物流(3)電力供給等製造に必要なインフラ環境-に注目する必要がある。