政府の産業競争力会議の民間議員を務めるコマツ相談役の坂根正弘・経団連副会長は、昨年1月に会議が始まった当初から「企業の新陳代謝の促進」を提言している。競争に負けて本来は潰すべき企業を過度に守って残せば、過当競争になり、勝ち組だったはずの本来は強い企業の足を引っ張る。まさに「ゾンビ企業」がはびこり、日本の競争力をそいでいると警告したのだ。
坂根氏らの提言を入れ、成長戦略にも「新陳代謝」という言葉が盛り込まれた。安倍首相も「日本を起業大国にする」と繰り返し述べている。新しい企業をどんどん生み出すには、本来は潰れるべき企業を潰し、時代遅れの古い企業や産業を淘汰(とうた)しなければならない。ヒト・モノ・カネの資源が有限な以上、当然のことだ。アベノミクスで経済再生を進めるには、この「新陳代謝」が不可欠なのだ。
では、安倍内閣の発足から1年がたち、この「新陳代謝」は動き始めているのか。
東京商工リサーチがまとめた2013年1年間の全国の企業倒産(負債総額1000万円以上)は1万855件と、22年ぶりの低水準になった。12年と比べても10.5%減った。
22年前といえば、バブル経済末期の1991年。好景気を背景に倒産が減っていた。では、昨年もアベノミクスによる景気回復で倒産が減ったのかというとそうではない。ゾンビ企業が温存された結果なのだ。
倒産件数はリーマン・ショックのあった2008年から減り続けている。民主党政権下で亀井静香・金融担当相が導入した「中小企業等金融円滑化法」、いわゆるモラトリアム法の効果が大きかった。企業が求めれば、金融機関は融資条件の見直しに事実上応じなければならなかった。この法律によって条件見直しが行われた融資はのべ401万9733件。対象になった融資額は111兆7424億円にのぼった。