この日会見を開き、問題発覚後初めて公の場に姿を現したマルク・カルプレス社長は、狼狽(ろうばい)していた。カルプレス社長らによると、2月初めごろからシステムのバグで不正アクセスが相次ぎ、正常に完了しない取引が増加したという。
その後、同社と顧客分の計85万BTC(ビットコインの単位、サイト停止直前レートで約114億6千万円)のほぼすべてが失われたことが判明。だが、利用者への弁済のめどは立っていないという。同社は、ビットコインが不正アクセスで盗まれた可能性が高いとしている。
2月11日には、ブルガリアとスロベニアの取引所がサイバー攻撃を受けたとして交換業務を一時停止。新たな決済手段として浸透しつつあったビットコインは、そのシステムの脆弱(ぜいじゃく)性が次々と露見した。
硬直した金融サービスに風穴あける“夢の通貨”
ビットコインは2009年に誕生した。世界各地の民間業者によるネット上の「取引所」に口座を開設し、手持ちの現実通貨と交換したり、取引所を介して第三者に送金したりできるのが特徴だ。
最大のメリットは、「海外送金の手数料がほとんどかからないこと」(業界関係者)。現実通貨の銀行送金ならまず窓口に出向き、現地通貨に換える為替手数料に加えて数千円程度の送金手数料を支払わなければならない。クレジットカードだと、店側は数%の手数料をカード会社に払うが、ビットコインなら1%以下で済む。