英国から中国に主権が移った後も、言論の自由を含む高度な自治による民主主義社会が保障されていた香港。だが、今年7月で返還から17年となる中で、「一国二制度の形骸化が急速に進み、香港が“中国化”してきた」(香港紙記者)という厳しい指摘がある。
香港政府は「報道機関への干渉はあり得ない」と否定するが、テレビ局への免許発給拒否をめぐっては昨年10月、2万人以上が参加したデモが起きるなど、政府批判は強まっている。
民主派寄りの香港メディアは、香港政府トップを選ぶ行政長官選で、中国政府寄りの人物だけが候補者として間接的に選ばれる現行制度を批判。2017年の次期選挙から普通選挙に移行するよう論陣を張っており、中国政府が神経をとがらせている。
中国共産党を美化した教科書の使用や中国国旗の掲揚を求める「愛国教育」への反発も強まっている。香港記者協会は3日、産経新聞の取材に、「今後は香港の中学校で『言論の自由』を生徒に教える講座を拡大する」と強調し、「愛国教育」に対抗して民主主義社会の価値を教育する活動も行っていく方針を明らかにした。