【シンガポール=本田誠】20日閉幕した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合は予想通り“不発”に終わった。11月の中間選挙で交渉の進展を実績に掲げたい米オバマ政権は、今夏に大筋合意にこぎ着けるシナリオを描く。日本も7月の首席交渉官会合が「大きなヤマ場」(甘利明TPP担当相)とみるが、交渉の長期化で妥結の機運が低下する漂流懸念は現実味を増している。
もともと、今回の会合は米国が事前に「交渉の進み具合を点検するための会議」と位置づけたこともあり、大筋合意の見送りは“想定の範囲内”。それでも、米国が開催にこだわったのは、オバマ大統領のアジア歴訪の成果を強調するためだ。閣僚会合後の会見でもフロマン通商代表部(USTR)代表が4月の日米首脳会談による協議進展などで交渉に弾みがついたことを繰り返し訴えた。
米国は今回の閣僚会合で、国有企業改革や知的財産保護など難航分野の打開を目指したが、「進展も後退もしていない」(交渉筋)という結果に終わった。反対派の急先(せん)鋒(ぽう)であるマレーシアのムスタパ貿易産業相も今回の交渉が「満足するものとは言えない」と冷めた見方を示した。
米国が交渉を急ぐのは、中間選挙が近づくにつれ、業界団体を刺激する交渉を進めづらくなるという事情が大きい。米国は今夏をTPP交渉の成果を打ち出せる「最後の機会」と捉え、7月か8月の閣僚会合で大筋合意に持ち込むことを想定している。
ただ、甘利氏は会合後、「(7月の閣僚会合での合意を想定するのは)楽観的だ」と厳しい見方を示した。合意には日米協議の決着が前提となることに変わりはないが、牛・豚肉の関税の引き下げ幅など残された課題を詰め切るのは容易でない。