先進7カ国(G7)首脳会議に先立ち行われた日本と欧州連合(EU)の首脳会談では、経済連携協定(EPA)の早期締結を目指す方針で一致した。自由貿易の拡大で経済成長を後押しするという共通の思惑が改めて浮き彫りになったものの、主な交渉分野で対立が残っており、日本側が求める2015年の妥結が実現するかは不透明だ。
「包括的かつ高レベルのEPAの早期締結に向け、交渉を加速させたい」。安倍晋三首相はEU首脳との会談で、自由貿易に向けた意欲を表明。EUのファンロンパイ大統領も「野心と志を発揮すべきだ」と応じた。
EPAの推進は約1カ月前の定期首脳協議で確認されたばかりで「会談の内容に目新しさはない」(外交筋)。にもかかわらず会談の主要テーマから外せないのは、消費税増税の影響が懸念される日本とユーロ高による低成長に悩むEUの双方が、EPAに経済成長の活路を見いださざるを得ないからだ。
だが、実際の交渉は足踏み状態が続く。欧州委員会は交渉開始の了承を加盟国から得るにあたり、日本の市場開放の状況を検証中で、焦点となる関税分野などの本格交渉は始まっていない。安倍首相が掲げる「15年の大筋合意」についても、EU側の同意は得られていない。
それでも今回の会談で、バローゾ欧州委員長が「加盟国からおおむね前向きな評価が出ている」と打ち明けるなど好材料も得た。「極めて前向きなトーンだった」。世耕弘成官房副長官は交渉進展に期待感を示した。(ブリュッセル 佐久間修志)