現在30歳と65歳の人の厚生年金給付水準を比べると、前者の70歳時点の水準は後者の80歳時点に相当する-。厚生労働省の試算によってこんな見通しが示された。若い世代の給付水準低下が避けられない状況が浮き彫りにされ、「百年安心」の看板のほころびを改めて印象づけた。
試算は、5年に1度の公的年金財政検証の一環として、厚労省が社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会に報告した。厚生年金を受け取るモデル世帯平均(手取り月給34万8千円の会社員の夫と専業主婦の妻、夫婦は同年齢)を想定。昭和24年度生まれ(現在65歳)から59年度生まれ(同30歳)までの人が将来どれだけの年金をもらえるかを、5歳刻みでシミュレーションした。
支給開始の65歳時点の年金額の、現役世代の手取り収入に対する割合(所得代替率)をみると、現在65歳の人は62・7%。その後は、年金額を自動的に抑制する「マクロ経済スライド」の影響で給付水準が下がるが、70歳時点で58・1%、75歳時点で51・6%と、現役世代の50%以上の額が維持される。現在60歳、55歳、50歳の各世代でも70歳時点まで5割を超える。