【専欄】日本の食べ物は安心安全 ノンフィクション作家・青樹明子

2014.7.3 05:00

ノンフィクション作家・青樹明子

ノンフィクション作家・青樹明子【拡大】

 東京世田谷の某スーパーにて。カット西瓜5切れで税込み627円。枇杷3個税込み735円。マスクメロン1個5123円。中国帰りの私には、眩暈(めまい)を起こすほどの値段である。大玉西瓜も10元(約164円)ほどで買えた中国の朝市が、俄然(がぜん)恋しくなってきた。

 ということを、中国版ツイッターで発信すると、思わぬ答えが返ってくる。

 「高くても安心して食べられるから、いいじゃない」「値段が何? 安全が第一だろう?」

 そうだった、そうだった。すっかり忘れていた。中国では安心安全がいかに高価だったかということを。食に対する中国人の不信感は半端じゃなかった。

 以前、友人のご両親を北京の日本料理店にお招きした。お父様はお寿司が大好物で、仕事の現役時代は日本に行くと、お寿司屋さんに直行されたという。

 ということで、お寿司のコースを注文した。しかし、何故か手を付けない。そして実に申し訳ないという様子で仰った。

 「日本の寿司は本当においしかった。でも中国で生ものは心配で食べられないんです」

 原来如此。そういうことか。

 食に関して、中国では想定外のことがよく起こる。

 中国でお米3キロを買った。「コシヒカリ」と名前がついていて、それなりの値段である。

 いざご飯を炊こうと、ボールにお米をあけると、何故か真っ黒。しかも何か動いている。虫だ! 虫がわいている!

 密封されたお米のポリ袋に蠢(うごめ)く無数の虫たちは、私の消し去りたい記憶の上位にランキングされている。

 この手の話は、枚挙に暇(いとま)がない。市場で買った苺は、洗うとなぜか表面の赤い色が消えてしまい、林檎をかじると中から虫が飛び出てくる。スーパーの魚は…、やめよう、きりがない。こういう状況下で、中国人はもちろん食に対して神経を使っている。

 日本の報道番組で、中国人の野菜処理方法を紹介していた。その工程はというと、(1)野菜を浄水で洗う(2)米のとぎ汁に浸す(3)再び浄水で洗う(4)加熱調理する。ああ、面倒だ。

 日本に留学経験のある友人は、一家で再び日本で暮らすことを計画している。「娘にちゃんとした牛乳を飲ませてやりたい」からだという。「中国の牛乳は、僕が子供の頃飲んでいたものとは全く別物だから」

 食の安心安全にかけるお金は、天井知らずである。

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