政府は29日、農林水産物の輸出を促進するため、輸出可能な農産物の掘り起こしや海外市場の調査などを担う「農林水産物輸出機構(仮称)」を創設する方向で最終調整に入った。平成27年度予算案に設置費などが盛り込まれる見通し。安倍晋三内閣は農産物の輸出を成長戦略の重要課題と位置づけており、32年までに輸出額を現在の約2倍にあたる1兆円規模に押し上げることを目標にしている。
「輸出機構」の創設は、全国の生産者や個別の農業協同組合(JA)が連携することなく、個別に海外へ売り込んでいる現状を改善するのが狙い。
具体的には「通年で良質なイチゴを輸出してほしい」などの海外バイヤーの需要に応えるため、各都道府県やJAを通じて農作物の作付けや生育状況を分析。「今月は福岡産、来月は栃木産」などと切れ目のない輸出が実現できるよう、司令塔的役割を担う。
また、海外に55カ国、73事業所を展開する独立行政法人「日本貿易振興機構(JETRO)」の協力を仰ぎ、海外の市場調査も実施。農産物が海外でより売れるような形態に整えるなどの指導も行う。
政府関係者は「高品質の日本産品は中国や東南アジアの富裕層を中心に需要が多いが、日本の生産者側と海外バイヤーとの歯車がかみ合っていない。国主導で農産物に関する情報を細かく分析し、農産物の輸出大国を目指す」としている。