先月下旬に再開した政労使会議で、安倍晋三首相が口にした「年功賃金の見直し」が大きな波紋を広げている。「子育て世代に手厚く賃金を分配すべきだ」という考えだ。女性の活躍を後押しする安倍政権が、若年世代までも味方につけようとする巧みな戦略が透けてみえる。しかし、終身雇用、企業別労働組合と並んで、日本型雇用システムを支えてきた制度が変われば、これから年功賃金制度の恩恵を受ける40代以上の会社員にとって、住宅ローン返済など、人生設計の練り直しを迫られる恐れもある。
良い待遇へ若年転職
安倍政権は、女性活躍を看板に掲げ、女性役員や女性管理職の目標値を持ち出した。さらに、「残業代ゼロ」制度との批判もあるホワイトカラーエグゼンプション(働いた時間に関係なく、成果に対して賃金が支払われる仕組み)の導入を検討。そして、40代後半~50代前半の会社員が恩恵を受けてきた年功賃金制度にもメスを入れようとしている。
年功賃金制度は、勤続年数、年齢などに応じて賃金を上昇させる人事制度。終身雇用、企業別労働組合と並んで、日本型雇用システムの典型だ。