東南アジア諸国連合(ASEAN)は、今年末にASEAN経済共同体(AEC)の発足を控える。ASEANは合計人口が6億を超える大市場で、AECは域内のモノやヒト、サービスの各分野の自由化を目指すとともに、世界市場での地位向上も図る。発足に伴う経済環境の大きな変化を前に、加盟各国の反応はさまざまだ。
◆国益重視の姿勢
人口2億5000万でASEAN最大のインドネシアでは、マレーシアやシンガポールから一方的に進出される懸念を強める。インドネシアの現地紙ジャカルタ・ポストによると、同国のジョコ大統領は昨年11月、ミャンマーでのASEAN首脳会議で「インドネシアは単なる市場になるつもりはない」と述べた。
また同大統領は、ビジネスにオープンであるべきだが、国益が第一だとする認識を示し「AECは相互利益と公平な競争に基づく関係を築くべきだ」と語った。こうした発言の背景には金融分野などで開放圧力を強めるシンガポールやマレーシアへの牽制(けんせい)の意味合いがあるとみられている。
米調査会社のボストン・コンサルティング・グループが昨年実施した調査では、インドネシア企業の重役の40%以上が準備不足の懸念を訴えており、同国ではAECで得るものよりも失うものの方が多いという疑念が広がりつつあるようだ。
これに対し、昨年の成長率が1%を切ったとみられるタイでは、AECに期待する声が目立つ。現地紙ネーションによると、同国政府は既に発足後を見据え、(1)国境地域の経済特区開発の加速と国境貿易の拡大(2)国内企業の競争力強化と域内各国への投資拡大(3)域内各国とのビジネス面での連携強化-を柱とするAEC活用指針を定めた。