「危険すぎる」。アラアッディーンさんは何度も止めたが、後藤さんは「湯川遥菜さんを助けたいんだ」「シリア人の苦難を伝えたいんだ」と言い残して笑顔で旅立った。アラアッディーンさんが同行を断ったため、別のシリア人ガイドを伴ってのラッカ行きだった。アラアッディーンさんは、この別のガイドといまだに連絡が取れないという。
イスラム国入りの直前、後藤さんはビデオ映像にメッセージを残した。「何が起こっても、責任は私自身にあります。どうか、日本の皆さんもシリアの人たちに何も責任を負わせないでください」
映像では「まぁ、必ず生きて戻りますけどね」と希望を語っていたが、その後、イスラム国に拘束されて連絡が途絶えた。後藤さんの妻がトラブルの発生を知ったのは12月2日。「夫を拘束する組織から一通のメールを受け取った」と妻の声明には記されている。
「最後に止められたのは自分だった。なんで止めてあげられなかったのか」。そう悔やむアラアッディーンさんは後藤さんが殺害されたとする映像が公開されたことを知り、「ケンジはジャーナリストの前に、私の一番の友達だった。いまだに信じられない。映像は最後まで見られない。顔も直視できない」と話した。