上海に駐在する友人に聞いた話だ。11月10日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて北京の人民大会堂で安倍晋三首相と習近平国家主席が会談した。日本のメディアは安倍首相にまともに向き合おうとしない習主席の表情から「笑顔なき握手」と報道し、両国の関係改善の道は遠いと思った人がほとんどだったかもしれない。ところが中国国民の受け止め方は違うという。表情はどうであれ、とにもかくにも国のトップ同士が握手したのだ。これで反日という建前に背く後ろめたさを一切感じることなく、日本に旅行し、日本製品を買うことができるようになると。
しばらくの間は、中国人旅行客による「爆買い」が国内需要を下支えし、日本経済のカンフル剤の役割を果たしてくれるかもしれない。
しかしこれで喜んではいけない。訪日旅行客の日本製品に対する熱狂ぶりとは裏腹に、中国国内での日本製品は相変わらず苦戦を続けているからだ。
◆「知覚品質」の落差
たとえば自動車の場合、尖閣諸島(沖縄県)をめぐる問題で大きくシェアを落とした12年から13年は順調な回復傾向を見せたものの、14年に再びシェアの低下を招いているという。自動車だけでなく、家電製品や化粧品など多くの日本製品は中国国内で決して高い競争力を持っているわけではない。