【ワシントン=小雲規生】オバマ米大統領は29日、通商交渉の権限を大統領に委ねる「貿易促進権限(TPA)法案」に署名した。これにより環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉合意に不可欠とされるTPA法が成立し、日米など交渉12カ国は大筋合意に向けた協議を加速させる。
オバマ氏はホワイトハウスで開かれた署名式で「世界の貿易のルールを書き直さなければならない」と強調。さらにTPA法によって、高い水準の市場開放や、労働者や環境の保護を目指すTPPが実現に向かって前進するとの考えを示した。また失業者対策を定めた貿易調整支援(TAA)法案にも署名し、成立させた。
大統領が通商交渉権限を握るのは2007年7月の失効以来、約8年ぶり。今回成立したTPA法は最長6年間にわたって政府が他国と合意した自由貿易協定を議会に諮る際、合意内容に修正を加えることを認めないことなどを規定。米議会が合意内容を覆せなくなり、TPP交渉各国は合意に向けて歩み寄りやすくなると期待されている。
交渉12カ国は7月下旬に閣僚会合を開催し、大筋合意を目指す考え。ただし大筋合意の前段階で合意が必要となる日米協議では、日本が設ける方向のコメの無関税輸入枠の規模では折り合えていないなど、難題も残っている。