「農協は暮らし全体を向上させるための寄り合い組織。その原点に立ち返らねばならない」
JA全中の新会長に内定した奥野長衛氏はこう強調する。農協の主役は、農作業に携わる組合員。JA全中はその意見を吸い上げる「黒子であるべきだ」というのが持論だ。
三重県伊勢市で農業を営む傍ら、約40年前に大阪市内で伊勢たくあんの販売店を開業。農業者が生産だけでなく、加工や流通にも携わる「第6次産業」の先駆けとなった。
伊勢農業協同組合(JA伊勢)で組合長だった平成23年には、農家が個々に行っていた青ネギの洗浄から、選別、箱詰めなどを集約する「パッケージセンター」を開設。地元農産物の販売拡大に大きく貢献した。
「現場の良い情報よりも悪い情報を集めろ。そこに改善点がある」(JA関係者)と呼びかける。徹底した現場主義に対し、農家からの信頼は厚い。
一方で、常にタブレット端末を複数台持ち歩き、付いたあだ名は「ITおじさん」。電子メールや交流サイト(SNS)で情報交換し、趣味の読書も最近は電子書籍を利用するなど“デジタル巧者”でもある。
(西村利也)