【ラハイナ(米ハワイ州)=小雲規生】TPP交渉の大筋合意を急ぐ米国と市場開放に消極的とされてきたカナダが神経戦を続けている。米国は乳製品などの市場の開放による米国農家へのダメージを、カナダに市場開放をのませることで相殺しようとし、カナダは安易な市場開放には応じられないとしてきた。しかし、ここに来て「カナダ外し」も見据えた各国からの圧力が強まりつつある。
2009年からTPP交渉を主導してきた米国は、ニュージーランドから乳製品の市場開放を求められ、米国の関連業界は難色を示してきた。だが、12年にカナダが交渉に加わると、ニュージーランドへの譲歩をカナダからの譲歩で打ち消す構図が浮上した。
焦点は、カナダが乳製品や鶏肉の価格維持のために生産量や輸入量を制限している制度だ。
米国のヘイマン駐カナダ大使は25日発行のカナダの週刊経済紙でのインタビューで、「ハーパー首相が何をするのか知らないが、今こそ譲歩すべきときだ」と述べ、制度の緩和を迫った。
一方、カナダの関連業界は「TPPで得られるものはほとんどない」と反発。また「米国も砂糖関連の産業を保護しているではないか」として、カナダも重要品目である乳製品の保護が認められるべきだとの声も根強い。カナダは10月に総選挙を控え、政治日程上も譲歩が難しいとされる。
ただし、カナダにはTPP参加で牛肉や豚肉の輸出拡大を見込めるメリットもある。米議会で高まる「カナダが乳製品市場を開放しなければ、カナダをTPPに含めることを支持できない」(ライアン下院歳入委員長)との声を無視することも難しい。
カナダ政府高官は国内関連業界に対して「ハーパー首相はカナダにとって最善の合意にしか署名しない」との立場を強調しているが、ハワイ入りした交渉筋からは「カナダは落としどころを探っているだろう」といわれている。