交渉がここまで延びたのは新薬データ保護期間でチリやペルーが米豪の合意案に抵抗感を示したためとみられる。これは議長国である米国の不手際も大きい。
今回の会合では連日、12カ国の閣僚らによる全体会合が短時間で終了し、残された課題を2国間で詰める作業に多くの時間が費やされた。なかでも米国は新薬データで豪州との協議を優先し懸案を抱える新興国との協議を後回しにし続けた。これに不満をあらわにしたのがニュージーランドのグローサー貿易相だ。「交渉国はNZが小国だからといって無視できるわけではない」。乳製品の扱いをめぐる米国との協議が一向に進まないことにグローサー氏は怒りをぶちまけた。
大国間で問題を解決し、新興国を押し切ろうとする米国の交渉姿勢には日本の交渉団も危うさを感じていた。会合4日目の朝。甘利氏はフロマン氏にこう詰め寄った。
「本当に解決させたいなら、NZとの協議も同時並行で動かすべきだ」
米国はようやく重い腰を上げたが、日本が懸念した通り、交渉は最後まですんなり終わらなかった。