政府が22日に全容を明らかにした環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の関税以外のルール分野は、投資や貿易、知的財産など多岐にわたり、中小を含む日本企業の海外展開を後押しする内容となっている。いくつかのポイントについて、意義や影響を探った。
■電子商取引
TPPでは、世界で急成長し、今後も拡大が見込まれる電子商取引市場向けのルールを定めた。
参加国間で行われる電子送信に対し、関税をかけることを禁止した。進出してきた外国企業に対して国内にホストコンピューターを設置するよう義務づけることも禁じた。進出企業にソフトウエアの設計図にあたる「ソースコード」の開示を求めることを禁止するルールも盛り込んだ。
世界では、中国がコンピューターソフトや現金自動預払機(ATM)のソースコードの開示を事実上求めるなどの動きがあるとされ、TPP交渉で日本政府が強く求めて実現した。
電子商取引は、拠点の設置が不要なため投資を抑えられ、海外の消費者などと直接、取引ができる。政府は、中小を含む日本企業にとって国際展開を進める上で有効な武器になると位置づけている。
■政府調達市場の開放
TPPには、政府機関による公共事業や資材の発注額が一定の規模に達した場合、外国企業にも入札を開放するルールが盛り込まれた。日本の建設業者などにとっても、「攻める分野になる」(甘利明TPP担当相)ことが期待される。
交渉参加国の中では、ベトナム、マレーシア、ブルネイの3カ国が、世界貿易機関(WTO)の政府調達協定に加盟しておらず、日本との経済連携協定(EPA)にも入っていない。日本企業はTPPによって初めて、3カ国の政府調達市場への参入が可能になる。
これらの国は成長が著しく、道路や橋といったインフラ整備需要の拡大が期待される。日本企業も受注獲得の商機が広がりそうだ。
新興国のインフラ投資をめぐっては、中国主導で設立されたアジアインフラ投資銀行(AIIB)の存在感が高まりつつある。日米はAIIBに対抗する手段を得ることにもなる。
■紛争解決条項
TPPには、企業が海外に進出しても対等に渡り合えるよう、投資面で公正さを担保するルールが盛り込まれた。その一つが、外国企業が進出先の政府を国際仲裁機関に訴え出ることができる紛争解決(ISDS)条項だ。
突然の制度変更で損害を受けることが起きた場合に、賠償を請求することができる。逆に、進出してきた外国企業から訴えられたケースでも、「訴えに理由がない」と思えば反訴することができる。
ISDS条項は、日本がこれまで各国と結んできた投資関連協定でも導入されている。ただ、日本企業が利用した例は少ない。
このほかTPPでは、相手国の政府が進出企業に技術移転などを求めることを禁じた。また、投資先の政府が自国の国営企業を優遇することも制限し、公正な競争環境が守られるようにした。