■政府、影響否定も残る懸念
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)では、関税のほかに、貿易に関する広範なルールを取り決めている。日本では、規制緩和などによる食の安全や国民皆保険制度が脅かされるといった懸念がTPP交渉前から指摘されていた。政府は「大きな影響はない」とするが、説明は口頭のみ。不安を払拭するには、今後公表される協定文の詳細を確認する必要がある。
食の安全については、農業関係者から米国の緩い基準をTPPで適用されるのではないかと不安視されていた。遺伝子組み換え作物を使った食品には使用表示を義務付けるなどの日本の安全基準は引き続き守られるという。
民間保険会社が強い米国から保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」の解禁を求められ、日本の国民皆保険制度が崩壊するとの懸念もあった。政府は公的医療保険を含む社会保障制度などは「TPP対象外」だとし、この懸念を一蹴する。
投資家が進出先の政府を訴えられる紛争解決(ISDS)条項では、訴訟が乱発される懸念もあったが、申立期間を制限し、むやみに訴訟を起こせないよう措置した。
著作権分野では、非親告罪の導入により、同人誌などの創作活動の萎縮が懸念されたが、対象は「著作権者の収益に大きな影響が出る場合」に限定することで「問題はない」とした。