【視点】大阪副首都構想 「官」に頼まず「民」のパワーを (2/2ページ)

2016.1.12 05:00

 副首都構想は以前からあったが、2011年3月11日に起きた東日本大震災で喫緊の課題として浮上した。東京が大災害やテロなどで首都機能を失った場合に備えて、バックアップする都市が必要というのである。国家の危機管理が主たる理由だった。

 一方、東京への一極集中を是正するため、中央省庁の一部を地方に移転すべきだという議論も根強い。こちらは首都機能の分散である。

 京都府は文化庁を、兵庫県は観光庁などを、そして大阪府も中小企業庁や特許庁の移転を求めていた。しかし、それだけでは副首都とはいえず、「二眼レフ」にも「ツインエンジン」にもなりえない。

 副首都推進本部は年末の初会合に●瀬直樹・前東京都知事を招き、今後議論を重ねて、今年秋ごろまでに中長期的なビジョンをまとめるという。副首都像も次第に明らかになるだろう。その際、忘れないでほしいことがある。

 大阪が急激に没落、衰退した時期がある。明治維新である。

                   ■

 江戸時代の大阪は幕府によって数々の商特権が与えられ、「天下の台所」と称される繁栄を謳歌(おうか)した。

 しかし、明治の新政府は、大阪の商秩序を支えていた「株仲間」を解散させ、豪商の「大名貸し」を帳消しにし、「天下の台所」の象徴だった堂島米会所を廃止した。さらには新産業を勃興させる官営工場も大阪には造幣寮と砲兵工廠しか設置されなかった。

 司馬遼太郎さんはこう書く。

 「明治維新早々の大坂は、一時期、人口も激減し、灯の消えた家と同然になった。その後の大阪は、建築でいえば補強や改造されたものではなく、ほとんど建てかえられたと同然といっていい。その努力は政府によるものというよりも、このまち自体の工夫と努力によるものである」(「大阪の原形」から)

 大阪は古くから「官に頼まず」だった。必要なのは、副首都という形ではなく、「民」の活力を引き出す施策である。

●=猪の日の右上に「、」

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

90%以上の受講生が継続。ISO認証取得で安心品質のマンツーマン英会話が毎日受講できて月5980円!《体験2回無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。