つまり、米国の意向で戦争放棄条項を押し付けてみたものの、国際情勢が変化してその「理想」が邪魔になってきたので、「自己保存」に励みなさいというご都合主義の堂々たる表明である。憲法の生みの親である米国にとっても、憲法の精神など所詮その程度のものだったというわけだ。
江藤氏によると、28年12月に来日したニクソン米副大統領(当時)も日米協会での演説で、憲法による日本の非武装化は誤りだったとこう公式に述べた。
「私は合衆国が1946年に誤りをおかしたことを認めます」(同書)
自民党の稲田朋美政調会長が「29年に自衛隊が創設され、(憲法が現状と)全く合わなくなっている。憲法の中で一番空洞化しているのは9条2項だ」と指摘している通りだ。憲法の精神は米国の意向に振り回され、とっくに踏みにじられているのではないか。
岡田氏が言うように国民が憲法を育んだというより、戦後ずっと憲法は米国製のまま、国民は全く手に触れることすらできなかったというのが実態だろう。
「改正されれば(国民)自らの手で新たな憲法をつくる初めての機会となる」
安倍首相は21日の参院決算委員会で強調した。岡田氏の後ろ向きな発言より、はるかにわくわくする。
(論説委員兼政治部編集委員)