経常収支の黒字は日本にどれだけ「稼ぐ力」があるかを示すバロメーターだ。
2000年代前半は経常黒字のうち貿易収支の黒字が大半を占めた。だが、昨年は6千億円超の赤字となり、産業構造の変化が鮮明になった。「生産の海外移転や輸入依存度の上昇で、貿易黒字幅が膨らみにくくなったため」(SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト)だ。
経常収支の黒字は、先進国で最悪の財政赤字を抱える日本にとって、国債の信認維持のためにも欠かせない。貿易収支の抜本改善が見込みにくい中、新たな稼ぎ手の育成に向け、訪日客の受け入れ体制の整備加速など、国主導で対策を強化する必要に迫られている。