高齢者らを狙う悪質商法が増える中、消費者庁は8日までに、訪問販売などで不当な勧誘をして業務停止命令を受けた業者に対し、消費者の被害を回復するよう国や自治体が指示できる制度を新設する方針を固めた。政府関係者への取材で明らかになった。
同庁が今国会への提出を目指す特定商取引法改正案に規定を盛り込む。不当な勧誘で代金を支払わされても、泣き寝入りしがちな消費者が代金を取り戻せるよう、行政が後押しするのが狙いだ。
現行法では訪問や電話勧誘、通信販売で虚偽の説明をするなどした業者に、違反の是正といった「必要な措置」を指示できるとの行政処分の規定がある。この規定を改正して「購入者らの利益の保護や回復のための措置」を明記し、例えば、業者に返金計画を立案させ、その計画通りに返金することを指示できるようにする。
返金計画が適切に実行されるかを行政が監視できるようになり、被害回復を促す効果が期待される。指示に従わなければ刑事罰の対象となる。
また、現行法で最長1年と定める業務停止命令の期間を最長2年に延長。悪質業者が次々と会社名を変えながら違反を繰り返すケースが目立つため、行政処分を受けた業者の役員らが別の法人を立ち上げて同種の事業を行うことを禁止する。
通常必要とされる程度を大幅に超える量の商品の販売や、長期間や多数回のサービス契約を勧誘する「過量販売・契約」を電話で行った業者には、現行法の訪問販売と同様に規制を可能にする。消費者から契約解除もできるようにする。
内閣府消費者委員会が昨年12月、特商法の見直しを求める報告書をまとめたのを受け、消費者庁は改正法案の策定を進めている。