一方、この輸出攻勢で世界の鉄鋼価格は大きく下落。これが日本をはじめ世界の鉄鋼メーカーの収益に逆風を吹かせている。原料の鉄鉱石価格も下落。原料を供給する資源国の景気にも悪影響を与えている。
鋼材価格の下落などで、欧州の鉄鋼大手アルセロール・ミタルは15年7~9月期の欧州事業が営業赤字となり、韓国の鉄鋼大手ポスコも15年12月期の連結最終損益が初の赤字に転落。いまや世界各国の業界関係者から“中国主犯説”の批判が高まっている。
雇用=政権への支持
なぜ、このような事態を招いてまで中国は輸出攻勢を続けるのか?
その理由を、齋藤氏は「問題の根本は、中国国内の鉄鋼の供給能力過剰問題にある」と説明する。
中国ではリーマン・ショック後の世界的景気低迷への対応策として、08年11月に4兆元規模の景気刺激策を発動。粗鋼生産能力は08年の6・4億トンから13年には11億トン超に急拡大された。