【上海=河崎真澄】中国国家統計局が12日発表した1~2月の鉱工業生産は前年同期比5.4%増と、リーマン・ショック後の2009年1~2月の3.8%以来、7年ぶりの低い伸び率となった。実体経済の景気減速に歯止めがかからない上、国有企業の統廃合や工場閉鎖などにより、鉄鋼など重厚長大の分野で影響が出始めた。
過剰生産の解消は習近平指導部が経済構造改革の中心として打ち出し、開催中の全国人民代表大会(全人代=国会)でも審議されている。粗鋼生産の能力を5年間で1億~1億5000万トン減らす計画だ。1~2月はすでに粗鋼生産量が5.7%、セメントが8.2%、板ガラスが1.9%とそれぞれ減少している。
工場閉鎖などで今後600万人前後が失業する見通し。受け皿には個人消費を支えるサービス業の拡大を当て込んでいる。だが、1~2月の小売売上高が10.2%増と2桁の伸びは保ったものの、昨年12月からは鈍化した。どこまで雇用吸収力があるか不透明だ。
一方、幅広い投資動向を映す都市部固定資産投資は10.2%増で、住宅販売の持ち直しを示した。
こうした中、中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は12日、今後5カ年で年6.5%以上の成長が目標となることに対し、「(大幅な制度変更を伴う人民元の)刺激的な通貨政策は必要なく、比較的、穏健な金融政策で達成できる」と楽観し、大規模な追加の金融緩和策には否定的な見方を示した。
国務院(政府)直属組織の銀行、証券、保険の3つの行政機関のトップも記者会見したが、実体経済低迷への危機感は乏しく、「改革の継続」で足並みをそろえるにとどまった。バラバラな金融行政の一元化や機動性向上なども急務だ。