バングラデシュは、飲料水の汚染が危機的状況にある。国際的な非政府組織(NGO)「ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)」は、同国政府が20年にわたって飲料水の汚染を放置した結果、地方の貧困層を中心に2000万人が国の安全基準を下回る水質の飲料水を利用していると告発した。現地紙ダッカ・トリビューンなどが報じた。
同国は、1970年代から地方の水供給を目的に全国で井戸の設置を進めたが、浅い土壌が自然由来でヒ素に汚染されており、ここからくみ上げた汚染水が供給されることになった。90年代には世界保健機関(WHO)が「史上最大規模の汚染状況」と評して世界に知られることになったが、以降の対策がほとんど進んでいないもようだ。
HRWによると、深い土壌からくみ上げる水は安全で、政府による井戸の設置計画も進行中だが、政治家が支持者を優先するなどして、設置が必要な汚染地域が放置されているという。
HRWの調査担当者は、汚染された飲料水が原因の死者は推定で年4万3000人に達するとし「バングラデシュ政府と国際社会が早急に対策を講じなければ、今後も被害が拡大する」と警鐘を鳴らした。