「イタリアのクラフトビールは欧州のなかでトップグループなんだよ」
意外な話を耳にして、ぼくは実態を知りたくなった。このセリフ、本当なのだろうか?と疑いながら。
かつてイタリアのビールは「かろうじてある」存在だった。ドイツ、英国、オランダ、ベルギー、チェコのようなビール大国の存在感からすると、「イタリアにビールってあるの?」と思われるほどだ。いうまでもなく圧倒的にワイン大国であり続けてきた。
そのイタリアで量産ビールの市場を奪うカタチでクラフトビールを飲む人が増えている。イタリア料理や凝ったハンバーガー店のメニューにもクラフトビールを見かけるようになったのだ。30代前半の男性客に聞くと、「クラフトビールは新しい発見があるし、カジュアルでいいよ」と話す。
クラフトビールがイタリアでスタートしたのは1990年代後半で、クラフトビール先進国の米国に遅れること約20年である。イタリアのビール市場における3%(金額ベースで5%と言われる)がクラフトのシェアである。クラフトビールが数量で10%を超える(金額ベースで20%以上)米国での比率からすると微々たるものだ。
冒頭の「欧州トップグループ」とは、欧州の第二グループ内という限定つきで、醸造所の増加が著しいという意味だった。イタリア人が得意とする大げさな表現である。しかし過小評価するのもミスだ。
イタリアのクラフトビール醸造所イメージはこうだ。
数で約1200。イタリアの北部から中部にかけた地方に多い。南部は極めて少ない。新たなビジネスに投資をする余裕や機運が乏しいのだ。醸造所には1-2人のフルタイムの従業員がいて、売り上げは日本円で数千万円。半数近くは1千万円以下であるが、1億円以上も1割はある。年成長率は数量ベースで3%、金額ベースで5%だ。
決して大きなビジネスではないが、状況が変化しつつあるのは確かである。