あえて言おう、問いかけの痩せた作品は愚作である (3/3ページ)

2016.7.3 06:00

 クリストという1人(正確には既に亡くなった奥さんのジャン・クロードとの2人)のアイデアを少数のスタッフと共に実現に向けて練り上げ、全ての関係者に有給で実施するプロジェクトだからこそ質に妥協がない。ボランティアは質を保証しない。ある限られたエリアに適用すべきオープンソースというコンセプトが、拡大使用され過ぎていないか?

 企業や自治体はアートの理解者として住民に文化的恩恵を提供する立場なのか? 

 第三者の分かった振りより、アーティスト自身のプロジェクトの方がどんなにインパクトがあるか。アーティストを下にもおかぬ振りをしながら、予算消化や節税の相手としかみていない姿は、文化を評価するに相応しい存在なのか?

 小さくても自分でできる範囲のことをすることがいいのか?

 圧倒的なサイズは人をそのサイズだけで感動させる。湖上にある3キロの散歩道は、遠くから眺めてもそれだけで次にある何か、を予感させる。できる範囲でやることが最善なのか? そのために小さいサイズを優先するのか?

 ぼくはこうした問いを考えざるを得なかった。この状況においてくれた作家に対し、感謝の気持ちが自然に湧いてきた。これを贈り物と呼ばずして何というのだろうか?イゼオ湖周辺の地元の人たちもさまざまに考えているだろう。

 あえて言おう。どんなジャンルであれ、問いかけの痩せた作品は愚作である、と。

(安西洋之)

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【プロフィル】安西洋之(あんざい ひろゆき)

安西洋之(あんざい ひろゆき)上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『世界の伸びる中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)フェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih

ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。

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