中長期的には、生産性を高めて、その分を賃上げに回すようにすることが重要だ。成長戦略や構造改革で生産性を引き上げれば、労働力人口の減少で低迷する潜在成長率も向上させられるだろう。
とはいえ、サービス残業を含めた日本人の労働時間は欧米に比べてかなり長く、生産性は相当低い。長時間労働を是正することが必要だ。
テレワークや在宅勤務を推進し、時間を節約しつつ、違う働き方でも同じ成果が出せるような環境を整えるべきだ。時間や場所を選ばない多様なスタイルを実現すれば、女性の活躍推進にもつながる。そういう認識が経営者に浸透しないといけない。
こうした働き方改革は、日本の労働市場をグローバルスタンダードに合わせる試みでもある。(中村智隆)
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【プロフィル】湯元健治
ゆもと・けんじ 京大経卒。1980年住友銀行(現三井住友銀行)。92年日本総合研究所調査部主任研究員海外チームリーダー。日本総研調査部長、内閣府官房審議官などを経て、12年6月から現職。59歳。福井県出身。
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【用語解説】伸び悩む実質賃金
実質賃金は賃金の名目の伸びから物価上昇分を除いた指標で、2015年度は前年度比0.1%減と5年連続のマイナスとなった。基本給や残業代などを合計した1人当たりの現金給与総額は0.2%増だったが、指標となる物価が0.3%上昇したため、実質賃金は増加に転じなかった。消費税率8%への引き上げの影響が一巡し、15年度の実質賃金の下落幅は14年度(3.0%)から縮小。16年に入ると物価下落でプラス基調となった。それでも、賃上げの勢いは引き続き力強さを欠いている。