かつて「一カ月休まないで、どうして人生を送れるのだ」と豪語していた人が多く、今もそういう人は少なくないが、どことなく肩身の狭い思いをしながら休む人が増えているのだろうか、という疑問を抱かせる。
ただ、ここで一つ注意だ。
夏の間に遠くに旅行に出かける現象は都会に見られる特徴で、地方都市にいくとぐっと減る。したがってバカンスの変化は、都会に限定した話として受け取ってもらったほうが良い。
そのうえで話すと、グローバル化はバカンスをとる人の態度を微妙に変化させている。
ソーシャルメディアを眺めていると、「アメリカ人はそんなに休んでいないんだなあ」とか、いやでも気づかざるをえない。だからアメリカ人のビジネスパートナーにアメリカ人がイタリア人は休暇中であろうと想像する日に、「例の件だが」とメールをわざわざ送る。無邪気にイタリアを謳歌していていいのか、ということを一瞬でも思う。そこに変化がある。
いや、ぼくが26年前にイタリアで生活をはじめた時から、イタリアの風習を悪しきものとして批判する人は当然いた。しかし、あの当時の人は、外国への無知が故に一面的な比較であった、という意味でも無邪気であった。そして外国のことをよく知って批判する人は、もっとイタリア社会で浮いていた。
が、今、そういう人がさほど浮いていない。