【社説で経済を読む】「豊洲」が教える地方自治の機能不全 東京以外にも“伏魔殿”が… (1/4ページ)

 □産経新聞客員論説委員・五十嵐徹

 「都民の台所」とも呼ばれる東京の築地市場(中央区)に代わる豊洲新市場(江東区)への移転計画が暗雲に包まれている。移転の遅れは、築地の跡地利用を当て込んだ4年後の東京五輪開催準備にも影響しかねない。

 土壌の汚染対策をめぐり、都は敷地全体に盛り土を行うよう専門家から提言を受けたにもかかわらず、独断で建物の地下には空洞を設けていた。事が食の安全に関わる問題だけに、納得できる説明が求められている。

 驚くのは、歴代の担当幹部ですら、報道で明らかにされるまで実態を「知らなかった」ことだ。議会答弁やホームページなどでは「工事は提言通りに行われた」などと、事実とは異なる説明を続けていた。結果的に「都は嘘をついていた」(9月16日付日経)ことになる。

 毎日は9月14日付の社説で、「提言を無断でほごにしただけでなく、その事実を隠そうとした疑いがある」と指摘。「市場関係者や都民に対する二重の意味の裏切り行為だ」と断じた。他紙もまた「あきれるばかりの独断専行」(9月14日付産経)、「信じがたい背信行為」(同15日付朝日)、「無責任体質に驚かされる」(同24日付読売)などといずれも論調は厳しい。当然であろう。

責任者は「不明」のまま