いわゆるMBA的なお行儀の良さへのウンザリ感からきた、パンクへの親和性かもしれない。
ワットは財務には煩く、キャッシュフローという企業にとっての「血のめぐり」の大切さを説くが、お決まりの結論に至らない。国境を越えてファンを作り資金を集めるといっても、クラウドファンディングのような他人のアイデアにおさまることは拒否する。
パンク株という独自な手法で20億円を集めたのだ。非上場でありながら、公開で株取引ができるシステムを作った。
「オープン」や「ガラス張り」といった聞き飽きたフレーズがあっても、ここには見飽きた結末がない。
こうして、ぼくも徐々にパンク病に冒されていく。
興味をもったぼくは、ユーチューブで同社のいくつかの動画をみた。工場の床に数々の大量生産メーカーのビールをボーリングのピンに見立てて並べ、ボールを投げる。そしてストライクで全てのガラスのボトルが割れる。
シンプルなメッセージに、思わず喝采だ。ワインの世界ではありえない表現だが、この武骨な凝らない芸がクラフトビールの世界には似合う。この芸風が愛されるからこそ、次の一言が効く。
「許可なんかクソ食らえだ。罪は寛容によって許される」
刺激的なセリフだが、ワットの思慮は深い。この続きを引用しよう。