【新興国に翔ける】やっとまともになった中国のタクシー 20年前はひどかった (1/2ページ)

 □スパイダー・イニシアティブ代表 森辺一樹

 中国のタクシーの変化には目を見張るものがある。年配者にお話を聞くと、今から30年ほど前は、タクシーの後部座席の床に穴が開いていて、地面が見えるなどということがざらにあったらしい。

 私が中国を初めて訪れたのは、20年ほど前だ。中国は今でこそ経済成長率が伸び悩み、2015年には7%を切ったことが問題視されているが、当時は10%程度と勢いがあった。特に、沿岸部の上海や深セン、北京は成長が著しかった。しかし当時でさえ、空港を降りて乗るタクシーはボロボロだった。シートベルトがなかったり、あっても座席に固定する金具がなかったり…。どうすればこんなに汚れるのかというくらい車内はひどかった。

 中国語に精通していない私は、目的地に無事に着けるかどうかさえ不安だった。今ならスマートフォンの地図機能を使えば、自分がどこにいて、目的地のホテルがどこにあって、遠回りしていないかがすぐにわかる。だが、当時はもちろん、そんなことなどできないし、英語が全く通じないので、中国語で目的地が書かれた略図を見せて「ここ、ここ」と指で示すしかない。

 中にはメーターを倒さずに言い値で交渉してくる運転手がいて、1000円くらいで行ける所を1万円などと吹っかけてくる。それを拒み続けると、ライチ畑に連れていかれ、「お金を払わないならここで降ろす」と言われたこともある。

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