今年もあと1カ月余りだが、「政治」という分野で振り返ってみると、世界的に激変が生じた一年であったと感じる。事前の予想を覆す結果があちらこちらで起きたからだ。
ヨーロッパでは英国のEU(欧州連合)残留か脱退かを決める国民投票が行われた結果、英国民の選択は脱退が多数となり、首相も交代する事態となった。日本でも、首都・東京のリーダーを決める都知事選で、政権党である自民党の推薦を受けた候補者が惨敗し、推薦がない自民党員である小池百合子氏が当選した。予想を覆す極め付きは、ドナルド・トランプ氏が次期米国大統領に選ばれたということであろう。
世界的に、民主主義の劣化も指摘されている。分かりやすい単純な言葉で有権者の不安をあおり、闘志をかきたてるような選挙手法は大衆迎合そのものであり、広く、深い思考を持って判断できないのであれば、それが正しい結果だとは言えないというものである。
しかし、有権者の質を問題視することだけで、これらの結果を評価してはならないと考えている。予想が覆される結果となったことは、予想の読みが甘い、つまり、有権者の思いを本気で分かろうという努力が足りない権力側や、有権者の思いと物事の本質を伝えきれていないメディアにも、問題があるということだ。